時間をテーマにした意欲的な展覧会「ACT Vol.3『停滞フィールド 2020→2021』」

文化スポーツに関するさまざまなイベントが実施されるオリンピックイヤーの今年、時間をテーマにした現代アートの展覧会が開催される。

「ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol.3『停滞フィールド 2020→2021』」は、オリンピック・パラリンピックの開催都市東京が展開する文化の祭典「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の1つとして実施するイベントだ。

■中止になった昨年度の展覧会を再び

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、これまで公募展や企画展などを通じてアーティストを支援して活動を紹介してきた。2018年度より開始したシリーズ「ACT (Artists Contemporary TOKAS)」では、TOKASのプログラムに参加経験のある作家を中心に、注目すべき活動を行っているアーティストの企画展を開催する。

今年度は、新型コロナウイルスの影響により会期途中で休止となった展覧会「ACT Vol.2『停滞フィールド』」の参加作家である田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪の3組を再び迎え、これまでの価値基準が大きく変化した現在の社会に応答する作品を発表する。

■コロナの時代に考える時間をテーマにした作品

・田中秀介

1986年和歌山県生まれ。大阪府を拠点に活動。日常の中で不意に出合った景色をモチーフに、その一部を意図的に強調したり、色彩を調整することで、自身が感じた驚きや違和感を映し出す絵画を制作している。

日々の生活の中であらゆる制限がなされ、暮らしが大きく変化した社会において、田中はこれまでと異なる対象の捉え方をするようになったと言う。

・広瀬菜々&永谷一馬

1980年大阪府生まれ(広瀬)。1982年兵庫県生まれ(永谷)。デュッセルドルフを拠点に活動。日用品や日常的に目にする物の機能を解体し、慣れ親しんだ物事への視点や、既存の価値観を問い直す作品を制作している。

本展では、野菜や果物、電球、コップなどの日用品を一つ一つ型取りし、焼成中にあえて変形が生じるように粘土を配合した磁器のインスタレーション《Still life》を発表。展示する場所に呼応しながら、作家の手によって配置される無数のオブジェクトにより、空間全体を変容させ、我々が世界をどのように知覚しているのかを問い掛ける。

・渡辺 豪

1975年兵庫県生まれ。東京都を拠点に活動。本や食器など身の回りにある物を3DCGでモデリングし、物質・光学的な法則から離れてモチーフが変化する映像作品を制作している。

コロナウイルスの影響下において、行動の制限を受けているがゆえに見えてくる「通常」とは異なる時空として、自宅からアトリエまでの経路に着目。本展では、アトリエの一角に置かれている作品をモチーフとしたダブルチャンネルのアニメーション作品を発表する。

「停滞フィールド」とは、SF作品やゲームに登場する時間が停滞した領域のこと。参加アーティストの3組は時空間に僅かな操作を施し、そこから生まれる差異や歪みを取り入れることで、物事の見方を問い直す作品を制作してきた。

本展覧会では、1年前の展示から引き伸ばされた時間に対峙しながら未知のウイルスによって人々の活動が滞り、今では停滞フィールドの内部に取り込まれたかのような社会を、それぞれの視点から捉えようと試みる。

時代とリンクしたコンセプトを持つ意欲的な展示を見れば、アートの今が体感できるだろう。

ACT Vol. 3 「停滞フィールド 2020→2021」
会期: 2021年2月20日(土)~3月21日(日)
会場: トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京都文京区本郷2-4-16)
ウェブサイト:https://www.tokyoartsandspace.jp/

(TF)