マティスとシャガール〜画家たちが愛した南仏コート・ダジュールを訪ねて

青く美しい海。ラベンダーが咲き、オリーブの木々が生茂る南仏のコート・ダジュールは、世界中の人々の心を引きつけ、また色鮮やかな色彩を求めて多くの画家たちが集まった。

今でも魅力的なその地域の一つ、ニースを歩いて画家たちの足跡を訪ねてみよう。

豪華なホテルが立ち並ぶニースの観光地は、たいてい海岸沿いに並んでいる。そこからバスに乗り、丘の方へと上がっていくと高級なマンションや邸宅が並ぶ住宅地へと入る。

その丘にはCimiez(シミエ)という緑豊かな公園があり、バス停の側には「Arènes de Cimiez」という、円形闘技場の跡がある。ローマ時代の遺跡が、その公園内のあちこちで見え隠れしていた。

そんな公園の中に、一際目立つ建造物がある。それが「Musée Matisse(マティス美術館)」だ。

鮮やかな赤い外壁に、たくさんの窓。ここはアンリ・マティスの美術館で、ニースで没した彼の作品だけでなく家具などの遺品も展示されている。

また、公園のすぐ側には、マティスがアトリエとして使用していたアパルトマンがある。外観も華やかな「Régina」という高級アパルトマンで、見学はできないが、外から見るだけでも価値のある建築物だ。

丘からニースの街中方面へと下っていく途中に、「Musée National Marc Chagall(マルク・シャガール美術館)」がある。ニースを訪ねる観光客が、一番の目的とする大人気の美術館だ。

帝政時代のロシアに生まれ、やがて南仏に魅了されてやってきたシャガール。ニースより西側の村「St-Paul de Vence(サン・ポール・ド・ヴァンス)」に長らく暮らしており、彼のお墓もそこにある。

青・赤・黄と、色鮮やかな彼の作品。「愛」や「聖書」をテーマにした様々な作品が一堂に集まっている。

ステンドグラスなども展示されているので、ゆっくりと時間をかけて彼の世界に浸ってほしい。

美術館を出ると、南仏の豊かな色彩や明るい太陽が目に飛び込んでくる。こんな美しい土地柄が、画家たちを導いたのだろう。

※2020年7月現在、欧州各国では出入国の制限をしています。旅行の際は必ずご確認を。

(田原昌)