新型コロナウィルス感染が、世界中にとてつもない速度で拡大している。現状のPCR検査は結果が判明するまでに要する時間が長く、誰もが望めば検査を受けられるという状態ではない。
新しいモビリティの提供を促進する革新的ソリューションを開発しているドイツのメーカーボッシュ ヘルスケア ソリューションズが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界初の完全自動分子診断検査のひとつを開発した。これは北アイルランドの医療技術企業であるRandox Laboratories Ltd.との協働の成果だ。
◾︎新型コロナウイルス感染症(COVID-19)迅速検査システム
新型コロナウイルス感染症は、世界中の医療制度と医療機関に大きな課題を突き付けている。ウイルスを迅速に診断する能力は、多くの国における爆発的拡大の抑制に非常に役立つ。
ボッシュが新たに開発した新型コロナウイルス感染症完全自動迅速検査システムは、診療所、病院、検査施設および保健所といった医療機関での迅速な診断に役立てることができるというもの。本システムは、ボッシュ ヘルスケア ソリューションズのVivalytic分析装置上で作動する。
ロバート・ボッシュGmbH取締役会会長のフォルクマル・デナーはこう語る。
私たちは、ボッシュの迅速検査システムが、コロナウイルスの世界的流行の食い止めに出来るだけ早く貢献することを望んでいます。この検査システムにより、感染した患者の特定と隔離が加速するでしょう。
コロナウイルスとの闘いでは、時間が非常に重要です。現場で確実かつ素早い診断を直接行えることは、私たちのソリューションの大きな利点であり、『Invented for life』テクノロジーそのものです
◾︎迅速な結果提供により拡大を減速
6週間で開発した迅速検査は、臨床現場で直接実施できるため検体の輸送が不要となり、検体採取からわずか2時間半以内に新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス(SARS-CoV-2)の検出結果が判明する。これにより、感染者の特定や迅速な隔離が可能になると同時に、患者が自分の健康状態について素早く確実に把握することが出来るようになる。
◾︎鑑別診断:10種類の呼吸器病原体を同時に診断
ボッシュの迅速検査は、あらゆる医療機関で使用できる世界初の完全自動分子診断検査のひとつだ。新型コロナウイルス感染症に限らず、インフルエンザA型およびB型を含む他の9種類の呼吸器病原体についても、ひとつの検体から同時に検査することができる。
ボッシュの検査の特徴は、鑑別診断を提供することにある。鑑別診断とは「症状を引き起こす疾患を絞り込むために行う診断。症状が他の要因から起こっていることを否定し、疾患を正確に診断するために必要」というもの。この診断により、医師がさらなる検査に要する時間を節約できるのだ。
さまざまな臨床試験の結果、ボッシュの検査は95%以上の精度で結果を提供した。また、この迅速検査システムは、世界保健機関(WHO)の品質基準を満たしている。
検体は、患者の鼻または喉から綿棒を使って採取する。続いて、検査に必要なすべての試薬がすでに収められているカートリッジをVivalytic装置に挿入して分析が始まる。分析中、医療スタッフは患者の治療など別の業務に携わることができる。
Vivalytic分析装置は、非常に使いやすい設計で、特別な訓練を受けていない医療スタッフでも確実に検査を実施することができる。24時間で最大10検体の検査を実施することができるので、100台の装置があれば1日あたり最大1,000回の検査を行うことができるようになるのだ。
新たに開発された迅速検査システムは4月からドイツで利用可能になり、その後、欧州の他の市場やその他の地域にも提供される予定だ。新型コロナウイルス感染症の拡大が勢いを増す中で、日本を含め世界各国の検査施設はすでに能力を超えて稼働しているのが現状だ。この迅速検査システムによって、対応可能な検査件数が拡大され、新型コロナウィルス対策に役立ってくれることを期待するばかりだ。
ボッシュ(BOSCH):https://corporate.bosch.co.jp/
(冨田格)