「Good Morning Angels(グッドモーニング エンジェルズ)」
「Good Morning Charlie(グッドモーニング チャーリー)」
スピーカーの声だけで指示を出してくる探偵事務所のオーナー、チャーリー・タウンゼントと、彼がスカウトした元警官である3人の美女たち。
1970年代後半に大ヒットしたアメリカのTVシリーズ「チャーリーズ・エンジェル」が再度リブート。新作映画「チャーリーズ・エンジェル」が2月21日より公開される。
世代を超えて語り継がれるエンジェルたちの魅力に迫ってみよう。
◾︎1970年代:オリジナルTVシリーズ
1976年、アメリカABCネットワークで放送開始された「チャーリーズ・エンジェル」。日本では『地上最強の美女たち!チャーリーズ・エンジェル』というタイトルで1977年から日本テレビで放送が始まった。
オリジナルのメンバーは、サブリナ・ダンカン(ケイト・ジャクソン)ケリー・ギャレット(ジャクリーン・スミス)ジル・マンロー(ファラ・フォーセット・メジャース、後に離婚してファラ・フォーセットに)の3人のエンジェルと、彼女たちをバックアップするジョン・ボスレー(デビッド・ドイル)、そして声だけの出演となるチャーリー・タウンゼント(ジョン・フォーサイス)。毎回、チャーリーから指令が下り、エンジェルとボスレーが事件を解決するという一話完結型のドラマシリーズ。
「刑事もの」+「スパイ大作戦(ミッションインポッシブル)」というフォーマットだが、女性がメイン、男性がアシストという設定は、60年代後半からの女性解放運動(ウーマン・リブ)の時代を経たからこそのもの。
同時期に、女性主人公が活躍するアクションものとして「地上最強の美女バイオニックジェミー」「赤い旋風ワンダーウーマン」も作られたが、明るくコミカルなトーンに3人3様の個性を持つエンジェルたちの華やかさが加味され唯一無二の世界観が構築された「チャーリーズ・エンジェル」の人気は突出。全米で放送が始まるや、西海岸のアメリカン・ガールという感じの健康的な色気でファラ・フォーセットの人気が大ブレイクして、ドラマの視聴率も好調。ファラ・フォーセットは第1シーズンで降板するも、以後メンバーチェンジをしながら第5シーズンまで続くヒットシリーズとなる。
ちなみに、第1シリーズから第5シリーズまで出演したエンジェルはケリー・ギャレット(ジャクリーン・スミス)のみ。
◾︎2000年代:映画でリブート
TVシリーズの終了から19年後、2000年にリブートされたのがマックG監督による映画「チャーリーズ・エンジェル」。
新たなエンジェルは、ナタリー(キャメロン・ディアス)ディラン(ドリュー・バリモア)アレックス(ルーシー・リュー)。まだ保守的な時代だった70年代後半のTVシリーズでは「上品で穏やか」な女性像の枠の中で個性を発揮していた印象だったが、映画版は男性が押し付ける女性像ではない強烈な個性を持つ3人の組み合わせ。まさに世紀の変わり目であるミレニアムらしいリブートとなった。ボスレーはビル・マーレーが演じ、チャーリーの声はTVシリーズと同じくジョン・フォーサイスが演じた。
主演女優たちによるワイヤーアクションをはじめ作品全体のスケールはTVシリーズとは比較にならないほど大幅アップ。美人でありながら軽々とお笑い設定をこなす主演女優3人のおかげで 、コミカルな印象もさらに強烈に。多くの人に愛されたTVシリーズのフォーマットを活かしながらも、アップデートされた魅力を携えた作品となり世界中で大ヒット。3年後には続編「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」が作られた。この続編には、オリジナルシリーズのケリー・ギャレット(ジャクリーン・スミス)が特別出演している。
◾︎2020年:よりアップデートしたエンジェルたち降臨
映画「チャーリーズ・エンジェル」のプロューサーでもあるドリュー・バリモア制作で2011年にTVでのリブート版「新チャーリーズ・エンジェル」が放送。そして2020年、新たな映画「チャーリーズ・エンジェル」が日本で公開される。
新たなリブートは、チャーリー・タウンゼント探偵事務所が設立されてから40数年を経てどのように変わってきたのか、を想像するところから始まったという。つまり作品のスタート地点から、オリジナルのTVシリーズのフォーマットを踏襲してきた今までのリブート版とは大きく異なっている。
2020年、チャーリー・タウンゼント探偵事務所は、世界各国に支部を持つグローバルな組織チャーリー・タウンゼント社へと変貌している。ここまで組織を大きくしたのは、初代ボスレー。「ボスレー」はもはや個人の名前ではなく、エンジェルをバックアップする仕事を担うマネージャーとしての役職名として使われている。世界各地の支部に属するボスレーの人種は様々であるし、エンジェル出身の女性ボスレーも誕生した。
エンジェルも3人ではない。チャーリー・タウンゼント社は世界各地で多数の女性エージェントを養成しており、案件によってチームが構成されていくので、毎回同じメンバーと仕事をしているわけではない。この作品では、オープニングで描かれる案件でチームとなった経験のある2人のエンジェル、サビーナとジェーンが2年後に別の案件で再びチームとなる。ある企業の内部告発者である開発部門の女性エレーナをフォローするはずが、巨大な陰謀へと巻き込まれ、初の女性ボスレーと共に4人の女性がチームとなって闘うことになる。
オリジナルTVシリーズのフォーマットが大きく変わったことで、最初は戸惑いを覚えるかもしれない。しかし、グローバルな案件に対し、案件ごとに最適なチームを編成して取り組むという仕事のスタイルは、まさに2020年のリアル。エンジェル出身の女性ボスレーが誕生したことで、男性が補佐になって女性を前面に押し出すというウーマン・リブの影響で作られたフォーマットも崩壊して、ジェンダー的な縛りからも自由になっている。
最初のリブート映画では「ワイヤーアクション」というケレン味たっぷりで派手な見た目のアクションがフィーチャーされていたが、今回はより痛みが伝わるコンバットスポーツ的なアクションとなっているのも注目ポイント。MI6出身という設定のジェーン役のエラ・バリンスカは、体格と筋肉量に圧倒的差のある男性相手の格闘場面に説得力を持たせる仕上がりを見せていて素晴らしい。
アップデートされまくった設定改変に対して正直、違和感を覚えはしたものの、サビーナ、ジェーン、エレーナの3人はまさにエンジェルらしい強さと自立心と可愛さが同居する魅力の持ち主。物語が進むに連れて、彼女たちを大好きになっていることに気づいた。
脚本・監督は「ピッチ・パーフェクト」シリーズや、サム・ライミ版「スパイダーマン」などに出演した女優でもあり、本作ではボスレー役も演じるエリザベス・バンクス。
サビーナは「トワイライト」シリーズのベラ役でお馴染みのクリステン・スチュワート。エレーナは実写版「アラジン」のジャスミン姫役を演じたナオミ・スコット。ジェーンはカルティエのブランドモデルでもあるイギリス出身の新人エラ・バリンスカが大抜擢された。初代ボスレーは「X-MEN」シリーズのプロフェッサーXであるパトリック・スチュワート。そしてチャーリーの声はジョン・フォーサイスが2010年に亡くなったのでロバート・クロットワーシーが演じている。前回のリブート版に続いて、オリジナルシリーズのケリー・ギャレット(ジャクリーン・スミス)が特別出演する場面にもご注目。
音楽はアリアナ・グランデが5曲を提供。マイリー・サイラス、ラナ・デル・ロイとコラボした主題歌「Don’t Call Me Angel」をはじめ、ノーマニ、ニッキー・ミナージュとのコラボ「Bad to You」チャカ・カーンとのコラボ「Nobody」など、サントラも必聴。
2020年のリアルを感じる新たな「チャーリーズ・エンジェル」は、従来のファンはもちろん、初めて見る人にも楽しめる作品になっている。2月21日より全国ロードショー。
『チャーリーズ・エンジェル』
監督・脚本:エリザベス・バンクス
出演:クリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エリザベス・バンクス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.charlies-angels.jp/
2月21日(金)全国ロードショー
(冨田格)