古典と現代の作品を組み合わせて展示するという、日本では珍しい試み。
世界から注目される2020年の東京において、新たな日本のアートの魅力に出会える展覧会「古典×現代2020ー時空を超える日本のアート」が今春スタートする。
尾形乾山や円空、そして葛飾北斎といった日本を代表する古典の巨匠たち。彼らの作品と、現代の日本を代表するアートとの比較を通じて見えてくる世界観とは何か。
その見所やアーティスト自身による紹介を聞いてきた。
■日本美術史の巨匠と現代作家の共演
今回の展覧会は江戸時代以前の名作と、現代の日本を代表する気鋭の現代アーティスト8組による共演。現代美術の国立新美術館と、日本と東洋の美術研究で長い実績を誇る國華社による、初めての共同企画となる。
それぞれの組がひとつの部屋に展示され、根底に流れる共通の主題や思い、また古典から得たインスピレーションやリスペクトを感じ取ることができるようになっている。
・花鳥画×川内倫子(写真家)
・刀剣×鴻池朋子(美術家)
・葛飾北斎×しりあがり寿(漫画家)
・仙厓×菅木志雄(美術家)
・円空×棚田康司(彫刻家)
・仏像×田根剛(建築家)
・乾山×皆川明(デザイナー)
・蕭白×横尾忠則(美術家)
■ジャンルは絵画にとどまらない
選出されたジャンルは絵画だけではなく、陶芸や彫刻、刀剣、そして建築という幅広い範囲を扱う。
この初めての試みに、現代作家たちは、古典の作品にさまざまな形で呼応した新しい作品やインスタレーションを発表予定。新作に出会える貴重な体験もできるのだ。
■葛飾北斎×しりあがり寿
浮世絵師として名高い葛飾北斎。2020年は、ちょうど生誕260年目を迎える節目の年である。
彼の作品の中でも人気の高い「冨嶽三十六景」に対し、しりあがり寿氏が描いたのは「ちょっと可笑しなほぼ三十六景」だ。
有名な「神奈川沖浪裏」で描かれている波を太陽のフレアに、そして波の向こうに見える富士山を地球にかえて描いたという面白い作品。ただのパロディなのではない、自然と人間、そして風刺をも含めた二つの作品を見比べてほしい。
「尊敬する葛飾北斎とともに自分の作品が並べられるなんて」と、しりあがり寿氏は恐縮したように言う。展覧会までに、北斎のアニメーションを作る予定だとも発表していた。
■自然の美
諸国を巡り歩き、多くの仏像を彫った円空。その円空と同様に、一本の木から命を掘り出す彫刻家が、棚田康司氏だ。
自然の木を生かして仏像を彫った円空のように、木の持つ「生命力」を重んじている棚田氏は、今回の展示に向けて巨大な作品を制作中とのことだ。
そして「ミナ ペルホネン」の代表である皆川明氏は、器を芸術にまで昇格させた尾形乾山と共演。昔と今の暮らしの共通点や違いを中心に、今回の展示を考えている。
まさに「温故知新」。時代を超えて生き続ける両者の魅力を、新しい視点から観てほしい。
■「古典×現代2020ー時空を超える日本のアート」
会期:2020年3月11日(水)~6月1日(月)
休館日:毎週火曜日 ※ただし5月5日(火・祝)は開館、5月7日(木)は休館
会場:国立新美術館 企画展示室2E
観覧料:一般1,700円(前売1,500円)ほか ※消費税込
URL:https://kotengendai.exhibit.jp
(田原昌)