宍道湖を一望する島根県出雲市の「一畑薬師」を訪ねて

「目のお薬師さま」として全国的な信仰を受ける臨済宗の古刹「醫王山 一畑寺(いおうざん いちばたじ)」。通称は「一畑薬師(いちばたやくし)」。

寛平6(894)年、一畑山の麓、日本海の赤浦海中から漁師の与市(よいち)が引き上げた薬師如来をご本尊として医王寺として創建。盲目だった与市 の母親の目が開いたり、戦国の世に小さな幼児が助かったと伝えられたことから、「目の薬師」、「子供の無事成長の仏さま」として親しまれている。

 

一畑薬師は島根半島の標高200メートルの一畑山上にあり、1,300段余りの石段の参道でも有名な寺。

現在は境内近くに駐車場が設けられているが、昭和36(1961)年に一畑山ドライブウェイが開通するまでは参拝者はこの石段を歩いて上がるしかなかったという。

百八基灯篭の並ぶ参道を通り、仁王門を抜け階段を登りきると右手に鐘楼堂と観音堂が建つ。

 

観音堂のご本尊は瑠璃観世音菩薩。内部に百八観音霊場の寺院の境内の砂が集められ、その砂を踏むことにより百八の寺院を巡拝するのと同じご利益があるとされる「お砂踏み」ができる。

 

薬師本堂にはご本尊の薬師瑠璃光如来をはじめ、日光菩薩、月光菩薩、十二神将が祀られている。

 

境内は宍道湖よりも日本海に近い立地であるが、宍道湖側に開けていて宍道湖が一望できる。

 

本堂の周りにある「八万四千仏堂」には奉納された青銅の小さな仏像が規則正しく並ぶ様子は圧巻。奉納主の願いを体内に納めた仏像は永代に渡って供養が続くそう。

 

本堂から下生閣(あさんかく)へ続く道にお釈迦様の高弟十六人の羅漢像が個性あふれる姿で並ぶ「十六羅漢堂」。「め」や「医」の字が書かれた絵馬などが奉納されている。

 

下生閣と呼ばれる建物は一畑寺の寺務所で、お守りや御朱印の授与など総受付が行われ、休息所もある。

下生閣にある「お茶湯(おちゃとう)」は「一畑」で栽培される特別なお茶。薬師堂の井戸からくみ上げられた御霊水を沸かした湯を使い、飲んだり瞼に付けたりするとご利益があるという。徳利に入れて持ち帰ることもでき、お茶湯の茶葉も販売されている。

境内のあちらこちらにゲゲゲの鬼太郎や目玉おやじの像が建っている。作者の水木しげる氏は幼少の頃に一畑薬師を厚く信仰する「のんのんばあ」(水木家のお手伝いさん)に連れられ参拝に訪れていたそうだ。

 

所在地:島根県出雲市小境町803番地

 

(小椚萌香)