夕陽に染まる海というのは、雄大で美しく心を打つもの。旅先ならその感動もひとしおだ。
台湾でも南に位置する港町・高雄の夕焼けも美しいと聞いたので、港を訪ねてみた。
今現在はメインで使用されていない港には、かつて輸出用のバナナや砂糖を保管する倉庫群がある。その一帯と倉庫がリノベーションされて現在では市民憩いの場となり、観光客も集まる名所になっていた。
煉瓦造りのその姿を見ると、横浜の赤レンガ倉庫や小樽、函館の倉庫群を思いだす。風情があって、とても好きな風景だ。
一番大きな倉庫は港に向かって横に長く伸び、1階と2階にカフェや手作りの小物の店、こだわりの台湾茶の店など、観光客だけでなく若者たちが楽しめるようなスポットになっている。このようなリノベーションした倉庫の姿は、日本と変わりはない。
20種類以上ものタップが並ぶ、クラフトビールの店もあった。店の窓からは港が見える。
外に持ち出せば、夕焼けを見ながらビールが楽しめるという、絶好のロケーション。すでに、外で賑やかに飲んでいる人たちの姿があった。
別の倉庫群にはシアターがあったり、高雄の街を走っている市電の模型(ミニ市電)に子供達が乗って楽しんでいたり、家族づれでも十分に遊べる。
市電が走り出すと、ミニチュアの信号機が鳴るような仕掛けもあり、周囲の人たちが通り過ぎる市電に手を振る姿は微笑ましい。日本でも見かける風景に、どこか懐かしさを感じてしまう。
この倉庫群の先は公園になっており、美しい庭園と水を引き込んだ小さな池もある。
端の方は砂浜のようにもなっており、子供達が喜んで入っている。暑い台湾にはぴったりの、安全な水遊びの場だ。
そして、この倉庫群の辺りから見た夕陽が美しかった。
高雄の夕焼けの名所は、このずっと先にあるという話だったが、ここでも十分。対岸の旗津(チーチン)の先に日が落ちていき、海がオレンジ色に輝く姿はとても美しい。
行き交う船とのコントラストが、まるで影絵でも見ているかのよう。暑さを忘れてずっと見ていたくなるような、南国の夕焼けだった。
(田原昌)