南仏では驚くほど多くのローマ時代の遺跡と出会える。
その中でも保存状態のいいコロッセオやギリシアにあるような神殿、水道の仕組みがわかる場所など「フランスの中のローマ」と呼ばれるNîmes(ニーム)の遺跡を見て回ろう。
ニームの駅を降り、きれいに整備されたAveneue Feuchèresをまっすぐ歩いて行くと、目の前に見えてくるのが「Arènes(古代闘技場)」だ。
保存状態が非常によく、現在でも闘牛やオペラなどのイベントが開催されている。
そこからさらに旧市街を歩いて行くと、まるでギリシアのアクロポリスにあるパルテノン神殿かと思わせるような見事な神殿が建っていた。
これは「Maison Carrée(メゾン・カレ)」と呼ばれ、5世紀頃の建築物である。あの、ユリウス・カエサルの二人の孫に捧げられた神殿であり、ローマのアポロン神殿を模したものだそうだ。
高く伸びた列柱も屋根も美しく、遺跡というよりもローマ帝国がそのままここに存在しているような素晴らしい保存状態である。
中ではローマ帝国と共に発展してきたニームの歴史に関する映画が上映されており、非常に分かりやすく面白い映画だった。
映画を観終わって外に出ると、地元の人たちがめいめいに柱の間に座ってランチを食べたりしている。保存状態が良いこともあって、その姿は15世紀も前の建築物のようには見えず、不思議な感覚にとらわれた。
ニームの人たちは、ローマの遺跡とともに生活しているのが普通なのだろう。
さて、ローマ帝国といえば、水道橋などの「水」に関する事業が得意であることも大帝国が築けた力のひとつ。ここニームにも、そのすごさが見て取れる遺跡がある。
ニームから北東へ約50km離れたところにユゼスという街があり、そこには「ユールの泉」がある。ローマ人はここから水を引き、途中には「Pont du Gard(ポン・デュ・ガール)」という強大な水道橋を建造し、ニームの街へ水を引いていた。その終着点が「Castellum(古代集水場)」だ。
街のはずれにあるこの集水場を見ると、貯水槽があり、その周りに穴が並んでいる。この穴から管を通して街のあちこちに水を引いていたというのだから、古代ローマ人の水道事業の技術力に頭がさがる。
現存するローマ遺跡としては非常に珍しいものなので、歴史好きなら是非足を伸ばして訪ねて欲しい。
ローマの遺跡がこんなにもよく保存され、現代に溶け込んでいる街はなかなかない。ローマ帝国に想いを馳せることができる、素敵な街だった。
(田原昌)