江戸の情緒と匠の技を堪能!「矢切の渡し」と「男はつらいよ」の舞台・帝釈天題経寺

旅というと遠くへ行きたくなるものだが、たまには東京をぶらりと旅するのも面白い。

「有名なのは知っているが訪ねた事はない」「近くまでは行った」など、身近な場所は案外行っていないものだ。

今回訪ねたのは、世界的にも有名な日本のシリーズ映画「男はつらいよ」にも出てくる、葛飾区柴又の「題経寺」。

題経寺と言われてもピンとこないかもしれないが、寅さんが「産湯に浸かった」と言っている「柴又帝釈天」のお寺である。

京成金町線「柴又」駅から歩いてわずか数分だが、それでは面白くないので常磐線の「金町」駅から歩いてみる。江戸川沿いを歩けば、心地の良い風が吹く。春には土手の桜が綺麗だろう。

やがて河原に人が大勢集まっているのが見えた。なんと、ここが歌にもなった「矢切の渡し」であり、今でも観光として渡し船を出しているのである。

江戸川を渡って対岸の千葉県松戸市へ。すぐに渡りきってしまうが、船頭さんが櫓(ろ)を使って漕ぐ姿は雰囲気が出る。周りの枯れすすきが味を添え、まるで広重の浮世絵「名所江戸百景」のようであった。

さて、ここから帝釈天は歩いてすぐ。周りがだんだん賑やかになる。

立派な二天門をくぐれば、目の前には本堂(帝釈堂)と巨大な松。まずはお参りをしてからお堂の見学をしよう。

総欅(けやき)造りの帝釈堂は江戸期に大火などがあって、現在のお堂は昭和4年に完成した。

見所は何と言ってもお堂を飾る彫刻。現在では保護のために全体がガラスの建物で覆われているが、下の方から屋根付近の彫刻まで、すぐ近くで見られるようになっているのでありがたい。

地元の名人達によって、技を競うように彫られた仏教の説法図や季節ごとの花鳥風月。

水辺の花や鳥が立体的に生き生きと描かれ、木を彫ったものとは思えない精巧な出来。これは絶対に見逃したくない芸術品だ。

お堂を回ったら、一緒に見ておきたいのが奥にある庭園「𨗉渓園(すいけいえん)」。

庭を囲む木造の廊下を歩きながら、あらゆる角度から庭が楽しめるようになっている。表の騒がしさを忘れる静けさが、心を落ち着かせてくれる庭だ。

最後に門前町を歩き、寅さんの実家として登場する「とらや」で名物の草団子を頂く。


「男はつらいよ」を見ていなくても、江戸の情緒があふれていて楽しい東京の小旅行だった。

(田原昌)