伝統的な英国スタイルとパンクの相反したミックススタイルが印象的。
ポール・スミス 2019年秋冬コレクションは、自己表現のスピリットとともに、素材と密接に結びついた英国の伝統的なアイテム、アート、パンクなどの相反する要素を融合している。
60年代後半、機知に富んだ若きポール・スミスはテーラリングの常識的なルールから逸脱し、当時はほとんど使用されることのなかった生地を積極的に採用し洋服に仕立てることで、故郷ノッティンガムの経験豊かなテイラーらを魅了した。カーテンに使用されるような素材を使用したツーピーススーツや、花柄のドレス素材を使用してダンディーなシャツを作ることで、他者とは一線を画したポール・スミスらしさを表現した。そのようなルーツに立ち返り、2019年秋冬コレクションでは、伝統的なイギリスのサルトリアルコードは自由かつ大胆に再解釈されるとともに、素材や仕立てのクオリティーを追求している。
ライディングコートやジャケットにアイデアを得たアイテムは、フライトトラウザーズやバイカーブーツとコーディネイトしている。
また、パンクのニュアンスがDIY的なフィーリングで落とし込まれている。これは70年代にクチュリエとしての修行を積んでいたポールの妻ポーリーンが、当時ティーンエイジャーであった子供たちの洋服にジップのディテールを施したり、自宅のキッチンでミリタリークローズを染めたりと、ハンドメイドでさまざまなアレンジを加えていたことに由来。
18世紀に登場しホースブランケットやフランネルシャツなどに使用されてきた英国らしいタッターソールチェックは、メンズのナイロン素材のアウターウエアやウィメンズのテーラリングなどにさりげなく落とし込まれている。プリントには相反するポッシュとパンクの融合が見られ、絵画のようなフローラルプリントはカットアンドペーストされた力強いグラフィックやアニマルプリントとミックスされている。
ショーのミュージックリストにはロンドン生まれの若手ポストR&BシンガーTirzahやスコットランド出身のディスコカルテットAmorらの楽曲が並び、今の英国を象徴する多様なラインナップ。
2019年秋冬シーズンのコレクションは、発想力に溢れ自己表現を追求していた初期の時代より変わらずポール・スミスの中心にある’個性’と’独立心’への祝福とも言えるだろう。
大胆で自由な遊び心を忘れずに。