皇妃エリザベートが皇帝と出会った地、オーストリアのバート・イシュルを歩く

オーストリアの西側、ウィーンからミュンヘンに行く途中の山岳地帯は、岩塩の採れる産地「ザルツカンマーグート」として名高い。

その山間にあるBad Ischl(バート・イシュル)という街は、かつては王侯貴族の温泉保養地であり、今でも温泉で人気の街である。

ザルツブルクからバスで1時間半、バート・イシュルの駅を降りると、静かでこぢんまりとしている

街の中心部に行くと賑やかになり、とても整備された綺麗な街だった。

駅のすぐ近くには公営の温泉施設(テルメ)があり、観光客でも利用できるようになっている。

また、ここには「Kaiservilla(カイザーヴィラ)」というハプスブルク家の別荘もある事で有名だ。

そう、バート・イシュルはハプスブルク家にとって運命の土地。

1853年に皇帝フランツ・ヨーゼフはここでエリザベートと出会い、結婚を申し込んだ場所なのである。この街においてエリザベートは華やかな宮廷にデビューすることになるも、数奇な運命を辿ることになった。

また、彼女は宮廷での生活が嫌になると、ここに滞在した。それがカイザーヴィラであり、今でも彼女の部屋が残されている。

岩塩の産地であるザルツカンマーグートにあるバート・イシュルの温泉は、当然の事ながら塩分の多い塩化物泉である。

話によれば、かつて後継ぎが出来なかったハプスブルク家の皇帝夫妻がここの温泉で保養し、子供を授かったとか。それが噂になって、この街は皇帝や貴族達の一大温泉保養地となったのだそうだ。

トラウン川とイシュル川に囲まれ、ざっくりと見て歩けば半日とかからない街だが、皇帝や貴族たちの集う街だったこともあって歴史のある建物やカフェも多い。

エリザベートが利用していた薬局「Kur Apotheke(クーア・アポテーケ)」も残っており、皇室の「双頭の鷲」の紋が掲げられている。

ザルツカンマーグートを巡る際に立ち寄ってもいいし、温泉を目的に宿泊するのもいい。

皇帝や皇妃エリザベートが愛した街を、のんびりとそぞろ歩きしてみよう。

(田原昌)