今やすっかり日本でも定着してきた「クリスマスマーケット」と、クリスマス前に食べるお菓子「シュトレン」。その両方に非常に深く関係しているのが、ドイツのDresden(ドレスデン)だ。
ベルリンの南に位置し、ドイツ東部の街ドレスデンはザクセン州の州都であり、かつて「ザクセン王国」の首都として栄えた古都。
エルベ川を挟んで新市街と旧市街が広がっており、ツヴィンガー宮殿などバロック様式の建築が建ち並ぶ美しい街である。
今の時期に開催されているクリスマスマーケット「Dresdener Striezelmarkt」は世界的に有名であり、ドイツ最古のクリスマスマーケットと言われている。また、ドレスデンは「Stollen(シュトレン)」発祥の地でもあるのだ。
ドレスデンにある老舗「Zscheile」のシュトレンを見てみよう。古のドレスデンの街が箱に描かれており、それだけでも非常に見事だ。
箱の中に横たわる、シュトレンの大きなこと!
これはキリスト生誕の様子、布に包まれたキリストをイメージしているのだそう。それで、周囲が白く砂糖に包まれているのだ。
箱の内側にはシュトーレンの歴史や食べ方などが事細かに書かれており、またエンボス加工されたザクセン公・アウグストゥス1世のシールが貼られている。これはドレスデンで作られた、正真正銘のシュトレン「Dresdener Christstollen」であるという証。
そしてこのアウグストゥス1世が、ドレスデンにおけるシュトレンにとって最も重要な人物。1730年に、彼はドレスデン中のパン・菓子職人達に命じ、なんと1.8トンもの巨大シュトレンを作らせたのだそうだ。
現在開催されているドレスデンの「シュトレン祭り」は、この巨大シュトレンをイベントとして再現したものである。
スライスしてみると、思っていた以上にぎっしりとレーズンやレモンピールなどが入っていて、爽やかな香りがする。作る地域によって内容が変わるらしいが、ドレスデン公式のシュトレンは使用する材料が決められている。
「マーガリンを使った物はドレスデンのシュトレンとは呼ばない!」など、「ビール純粋令」を守るドイツ人らしいこだわりぶり。それが伝統を守るという心意気なのだ。
シュトレンを食べながら、クリスマスを待つ。
本場のシュトレンは、伝統の重さと歴史の上に作られた美味しさを伝えていた。
(田原昌)