ウィーン観光でメインになる宮殿と言えば、中心部にある「Scholoss Hofburg(ホーフブルク宮殿、王宮)」と、少し離れた「Scholoss Belvedere(ベルヴェデーレ宮殿)」、そして郊外にある庭園の美しい「Scholoss Schönburunn(シェーンブルン宮殿)」の3ヶ所である。
今回紹介したいのは「Scholoss Belvedere」。プリンツ・オイゲン公の夏の離宮として、18世紀初頭に完成した宮殿である。
広大な敷地に美しい模様を描く庭園、そして上宮と下宮の2つの巨大な建物が平行して並ぶ造りになっており、今はどちらも美術館(「オーストリアギャラリー」と「中世・バロック美術館」)として使用されている。
とにかく敷地が広大で、左右に広がる建物が余計に広さと威厳を感じさせる。バロック式の建物には美しい彫刻も並び、白い壁に青銅の緑が映える屋根が美しい。
内部の美しさにも目も見張る。彫刻も、レリーフも、そして鮮やかな彩色の天井画も見逃せない。窓枠一つ取っても芸術的で、感動ばかりしてなかなか先へと進めない宮殿だ。
このベルヴェデーレ宮殿における絵画の目玉は、何と言ってもクリムトの代表作「Der Kuss(接吻)」であろう。
観光客はこれだけを目当てに、この宮殿に来るくらいだ。チケットも「クリムト・チケット」なる、上宮だけを見学するチケットも販売されているので、時間がない場合はこちらを購入しよう。
当然、「接吻」の展示室は混み合っていて、いつでも人が目の前に集まって鑑賞している。今年はクリムト没後100年に当たるので、余計に混んでいるのかも知れない。
さて、観光客の多くはここで回れ右をして帰ってしまうのだが、せっかくなので広大な庭園を散歩しながら下宮へと向かう。大きな噴水、迷路のような庭木など、よく手入れをされていて実に気持ちがいい。
赤い屋根の下宮も美術館になっているのだが、内部の豪華さはやや上宮よりもおとなしいとは言え、豪華なものだ。大きな鏡を壁に設置した鏡の間や、金装飾は実に見事だ。
そして美術展示ではたまたま「花」がテーマになっていて、こちらにもクリムトの作品がいくつか展示されていた。これまた見逃すのはもったいない話である。
ベルヴェデーレ宮殿では、絵画鑑賞はさほど時間がかからないが、宮殿内部の美しさと庭園を楽しみたいなら時間をしっかりと取ろう。細やかな装飾まで美しい、建物自体が美術品のような宮殿を堪能したい。
(田原昌)