岐阜県の白川郷は国重要伝統的建造物群保存地区で、ユネスコによる世界遺産にも登録されている。
白川村にある明善寺(みょうぜんじ)は山門(鐘楼門)、本堂、庫裡ともに茅葺屋根という全国でも珍しい寺。
白川郷で最大の合掌造りの古民家である庫裡(寺院の僧侶の居住する場所、寺内の時食を調える調理所など)は、高山の大工副棟梁与四郎によって建てられ、現在は郷土館として公開されている。
郷土の民具などの資料の展示と、養蚕も行われていたようで、蚕棚や製糸用具なども展示する。
釘を使用しない合掌造りの太く重厚な柱は、しっかりと結ばれた縄とともに囲炉裏の煙で燻され黒く変色している。
上階の窓からは合掌造りの民家や遠くに見える山々の風景で爽快。
足元は温まった空気が上がり循環するよう隙間のあいた床で、下の階の様子が窺える。囲炉裏の煙が建物にまんべんなく行き渡るよう工夫された造りである。
上がる時はそうは感じなかったが、下りる際は急勾配の階段に足がすくむようで手すりをつかむ手に思わず力が入る。
庫裡の内覧の後、高山の大工水間宇助により延べ9,191人を要して建築されたといわれる明善寺本堂へと移動。
大胆な構図の襖絵や細かな彫刻の施された欄間、浜田泰介画伯の四季の富士山などが描かれた障壁画なども見ごたえがある。
囲炉裏のある休憩室では囲炉裏端で休むこともできる。囲炉裏が焚かれた座敷の風景はどこか懐かしさを感じついのんびりと寛いでしまう。
鐘楼門の屋根は茅葺きで、1階に板庇をつけた珍しい建築物。内部の見学の時間がとれなくても見られるので寄ってみるべき場所のひとつだ。
白川郷へ出かけられた際は合掌造りの迫力を内部から感じてみてはいかがだろう。
明善寺郷土館 所在地:岐阜県大野郡白川村荻町679
(小椚萌香)