鹿児島県の阿久根(あくね)は、薩摩半島の北、やや熊本県に近い街。日本に初めて「ボンタン」が渡来した場所と言われ、タケノコのような山の幸、そして「きびなご」を始めとした海の幸が楽しめる土地柄だ。
そんな阿久根の旧港のすぐそばに、「港町Dining まる」がある。雑然とした界隈に突然現れた、お洒落で落ち着きのある外観。若い人たちや都心の人たちにも気に入られそうな雰囲気だ。
入り口から続く敷石を歩き、まるで民家にお邪魔するような上がり口。どっしりとした木の風合いが、落ち着きを与えている。
座席はひとりでも楽しめるカウンターから、宴会も出来る個室まで。周りを気にすることなく食事が楽しめるようにと、気をつかった造りになっているのが人気の一つ。狭いコミュニティでは知り合いが多いので、こういう店は重宝がられるという。
料理は地元産の海の幸、山の幸をふんだんに使った創作料理で、メニューが豊富。色々と考えていたら増えてしまった、と店主は笑う。
まずは阿久根の漁港でとれる魚がメインの、新鮮な刺身の盛り合わせ。鹿児島らしい「カンパチ」や、ほどよい脂がたまらない「炙り〆鯖」が美味しかった。
そしてオススメだという事で、この炙り〆鯖を使った珍しい天ぷらにチャレンジ。
揚げることで甘みが出るのか、ふわっとしてジューシーな〆鯖の旨味が口いっぱいに広がる。これは新しくて美味しい発見だ!
酒は阿久根にある蔵元の「鶴見」や「莫祢氏(あくねし)」、近場である長島の「島美人」といった焼酎から、日本酒もこだわりのラインナップ。安いのでついつい盃が進んでしまう。
メニューには鳥のユッケや、デザートにさつまいものメープルシロップがけと、どれも美味しそうなものばかりが並ぶ。ボリュームも十分だ。
「現地の人たちは、新鮮な魚というのは当たり前のように食べている。だからその点を追求するのではなく、あえて食べたことのない方法で提供したい」と、店主は創作料理を作り続けている。
挑戦し続けて今年で12年。今ではこの港町になくてはならない、ホッとくつろげる店だった。
(田原昌)