備前池田家の後楽園、加賀前田家の兼六園など日本では城だけではなく庭も重要な権威の象徴であるが、ヨーロッパでもしかり。立派な宮殿に美しい庭園。その庭園が、外側から見た宮殿をより豪華に引き立ててくれるのである。
オーストリア・ウィーンと言えば、ハプスブルク家が絶大な権力を持っていた土地柄。中でも女帝の名高いマリア・テレジアは、ウィーンを訪れると今でもその権力の影響をひしひしと感じることが出来る。
そんな彼女が大改修をした「Schloss Schönbrunn(シェーンブルン宮殿)」は、ハプスブルク家の夏の離宮。市の中心部から少し離れた所にある。
シェーンブルン宮殿はとにかく広い。宮殿内は勿論のことだが、何と言っても庭園が広大だ。立派な噴水が点在し、ガラスで出来た美しい温室や、今では植物園や動物園まである。
庭園内を走るパノラマトレインまで走っているのだから、その広さが分かって頂けると思う。
庭園はいくつかに別れており、季節によって様々な花が咲いて人々を楽しませてくれる。日差しが強い日でも、パーゴラの中にいれば心地良い。
宮殿を出て庭園を真っ直ぐ歩いて行くと、見えてくるのが巨大な噴水。「Neptunbrunnen(ネプチューンの泉)」という、海の神・ネプチューンの大きな彫刻が鎮座している白くて美しい噴水だ。
真正面から見るのもいいのだが、ここは左右から回って彫刻の後ろに行ってみて欲しい。彫刻と、そこから流れ落ちる水を通して、シェーンブルン宮殿の姿が拝めるという美しいパノラマ。
マリア・テレジアがそうやって見たかどうかは分からないが、よく考えて配置されているものだ。
宮殿とネプチューンの泉の間に、迷路がある。人の背の高さ以上ある庭木を用いた迷路は、貴族達の間で流行したとか。
大きな木が目印になっているのですぐに辿り着けるかと思いきや、これがなかなか上手くいかない。時間があったら挑戦してみては?
シェーンブルン宮殿の庭園は観光客も多いが、今やすっかり市民憩いの場。子供たちが遊べる公園も中に作られており、親子連れが多い。一番奥の丘の上にはカフェもあるので、宮殿と庭園を見ながらホッと一息つこう。
「夏の離宮」の名にふさわしい、緑と水の豊かな庭園。晴れた日を狙って散歩することをオススメしたい。
(田原昌)