ブランド和牛というと、何をイメージするだろうか。栃木県の大田原牛、三重県の松阪牛、滋賀県の近江牛、兵庫県の神戸牛などが挙がることだろう。しかし、2017年に開催された「全国和牛能力共進会(通称 和牛オリンピック)」のなかで肉質に関する審査の1位を獲得して“日本一の和牛”と認定された、知られざるブランド和牛「鳥取和牛」をご存知だろうか。
その鳥取和牛のひとつである“大山黒牛(だいせんくろうし)”を味わうことができる都内唯一の店「焼肉 強小亭GINZA」が3月26日にオープンした。
■鳥取和牛の品種改良に挑み、“日本一の和牛”の称号を獲得
鳥取と和牛の歴史を紐解くと、その歴史は驚くほど長い。なんと、平安時代にも鳥取を代表する名山「大山」の山麓で牛の生産をしていた記録が残っているのだという。また、江戸時代から明治時代には全国で最大規模の「牛馬市」(牛や馬を取引する市場)として栄え、長い和牛の歴史の中で鳥取はルーツのひとつとされているのだという。
しかし、早く大きく育つという特徴に持つ鳥取和牛は、松阪牛や神戸牛など霜降りの強いブランド牛の人気に押される形で影を潜めてしまう。そこで、鳥取和牛の品種改良に挑み、鳥取県産のブランド和牛を再び立ち上げ、幾度の挑戦を経て“日本一の和牛”の称号を獲得したのだそうだ。
■生産頭数は、わずか130頭。1ヶ月に2頭しか出荷することができないという希少な牛
過去11回開催された和牛オリンピックの第1回優勝牛は、鳥取和牛だった。それから50年の間に、(霜降り人気という)トレンドの変化に追いつこうと取り組んできた。今回、肉質日本一に鳥取和牛が輝いたことで、生産者のこれまでの努力が報われた」(鳥取県庁東京本部長の岡崎さん)
その生産に携わったのは、鳥取県大山町で西田畜産を営む西田佳樹さん。地元の生産者や精肉店を巻き込み鳥取発の和牛ブランド“大山黒牛”を立ち上げ、大山山麓が磨いた上質な水と、地元農家が減農薬で育てたお米のわら、そして西田さんの深い愛情によって、極上の大山黒牛を育て上げたのだという。生産頭数は、わずか130頭。1ヶ月に2頭しか出荷することができないという希少な牛で、今回オープンした「焼肉 強小亭GINZA」は鳥取県外で唯一この大山黒牛を味わえる店なのだ。
■鳥取の夢と生産者の努力の結晶である“大山黒牛”
「肉の流通では、農家がどんなに愛情を掛けて育てても、その価値は市場の購買者が決める。そこに生産者の気持ちは一切入らない。僕は、家族同様に育てた牛が最後の最後で生産者の感情を入れられない形で(食肉として)売られていくのがすごく嫌だった。そこで、自分でブランドを立ち上げて、自分自身が納得できる形で販売できる方法を作ってきた」(西田さん)。
こうした鳥取の夢と生産者の努力の結晶である“大山黒牛”は、どのような味わいなのだろうか。実際に食べてみると、赤身肉も霜降り肉もサシの入りは絶妙で、その脂身の味わいは他の和牛に比べて軽やかなのが特徴だ。その上で、赤身の持つ風味や脂の甘さ、そして肉のとろけるような柔らかさが口の中に広がっていく。
■コース料理を通じて、大山黒牛がもつ“日本一の肉質”を堪能
試食した赤身肉であるカメノコとイチボは塩でシンプルに肉の風味を堪能し、霜降り肉であるザブトンのしゃぶしゃぶは出汁でさっぱりと、そしてすき焼き風に仕上げた霜降りサーロインは鳥取県産のブランド卵「天美卵」の黄身に絡めていただく。
部位によって異なる味わいの大山黒牛を、それぞれの肉の旨味を最大限まで引き上げてくれる食べ方を楽しむことができるのだ。また、前菜として出された大山黒牛の握りや雲丹の大山黒牛巻も、大山黒牛の赤身が持つ濃厚な旨味を堪能できる逸品。コース料理を通じて、大山黒牛がもつ“日本一の肉質”を堪能することができる。
「焼肉 強小亭GINZA」は、銀座の新たな名所「GINZA SIX」のすぐそば。メニューはコースのみで、10品のコースは1万5000円(税別)。ドリンク・アルコール類が飲み放題になる15品のコースは、2万5000円。大山和牛をこの世に生み出したひとりの生産者が叶えた“鳥取和牛50年越しの夢”。その世界を、ぜひ体験してみてはいかがだろうか。
参考リンク:https://kyoshotei-ginza.com/