世界遺産「白川郷」から車で20分ほどの平瀬温泉にある「藤助の湯 ふじや」。
宿の駐車場に車を入れると砂利を踏む音を聞きつけて宿の方が現れる。歓迎の挨拶をし、大きな荷物を持って玄関へと案内してくれる。
古民家を移築した建物は懐かしい雰囲気が漂う。雪国ならではの造りなのか、低い開き戸を入るともうひとつ格子の戸がある。
館内はホッとする暖かさ。囲炉裏の間と天井の高いお座敷の広間があり、奥に目を向けると暖炉に火がともっている。
暖炉脇でチェックインとともにお茶ときな粉餅をいただく。
ロビーや食事処のある母屋、大浴場と貸切湯のある温泉棟、客室棟が渡り廊下で繋がる。
客室は掘り炬燵のある和室、囲炉裏のある和室、ツインベッドルームを備えた和洋室、古民家特別室の全11室。
宿泊したのは囲炉裏の部屋のついた2階の和室。トイレと洗面室があり快適に過ごせる。
男女別の大浴場にはそれぞれ内湯と露天風呂。15キロ先から高温の温泉が引かれ、夏季は井戸水で間接冷却し、加水・加温・循環なしのかけ流し。冬季は末端の貸切湯の湯温がぬるめとなるが、自然のままの状態で利用している。
食事は母屋の食事処でいただく。囲炉裏のある個室に案内され、座ると素朴な猪口に食前酒のかりん酒、ぜんまいとこも豆腐、籠に敷かれた朴の葉に少しづつ並んだ前菜と品書きがセットされている。紅葉した南天の葉と赤い実が添えられ美しい。
日本全国鍋大会で優勝した村興しの「飛騨牛すったて鍋」は煮大豆をすりつぶしたものに味噌などで味付けしたすったて汁に飛騨牛や野菜を入れて煮た郷土料理。
岩魚の塩焼き、茶碗蒸し、山の幸の天ぷらなど地元食材の素材の味を活かした山里料理のできたてが運ばれる。
熱燗をオーダーすると猪口が丼の中で温められて出てくるという気の利いた接待も嬉しい。
朝食は新鮮な食材をバランスよく、彩りも華やかに。囲炉裏で温めていただく朴葉味噌はドレッシングとしてサラダにも。味噌の焼ける香ばしさが食欲をそそる。
かけ流しの天然温泉、素朴で温かい料理ともてなしに心安らぐ宿である。
住所:岐阜県大野郡白川村平瀬325-1
藤助の湯 ふじや 公式サイト:http://www.tousuke-fujiya.com/
(小椚萌香)