南仏プロヴァンス地方のアルルには、ローマの遺跡がたくさん残っている。代表的なものが闘技場であるコロッセオと、劇場、そして共同浴場だ。どれも良く当時の姿を伝えてくれる、貴重な史跡である。
アルルの観光は、まず「les Arènes d’Arles(円形闘技場)」からスタート。もっとも良い状態で遺されているローマ遺跡なので、じっくりと見学したい。
それから向かうのは、すぐ近くにある「Théâtre antique d’Arles(古代劇場)」だ。こちらも規模が大きく、闘技場に比べると保存状態があまりよくないが、ローマ時代の劇場の姿を良く伝えてくれる。
アルルの街を作るために劇場の石を使ったそうで、現在残っている石柱は数本のみ。しかし舞台を中心にして弧を描く観客席はよく残っていて、今現在でも劇場として使用されているとのこと。
肉声が観客席にちゃんと届くように設計されており、ローマ人の技術力に脱帽だ。
また舞台裏(裾か?)に回ると、崩れてしまった石柱などが並べてあった。果物や神や人物のレリーフが残っていたり、文字が刻まれているのもある。これを見ると石柱の構造が分かり、また歴史のロマンを感じさせてくれる。しばし散策してじっくりとローマ時代に浸りたい。
さて、劇場から街中を散策しながらローヌ川に抜けてみよう。土手のすぐそばに見えてくるのが、「Les Thermes de Constantin(コンスタンティヌス帝の共同浴場)」だ。日本人のように風呂に入ることが大好きだったローマ人の、大切な遺跡である。
社会の授業で必ず習うコンスタンティヌス帝という名前が、街の中にさりげなく現れる所がすごい。この共同浴場が作られたのは4世紀であり、当時の3分の1しか残っていないとは言え、ずいぶんと広くて高さのある浴場だったことがうかがえる。
また崩れてしまった部分から、熱を循環させる構造などの当時の様々な工夫が見られる。
日本のサウナのような構造物も残っており、非常に興味深い遺跡だ。ローマの人々はどんな階級でも、男でも女でも夕食前には共同浴場にやってきて一日の疲れを癒やしたらしい。
闘技場で熱狂し、劇場で芸術に触れ、そして共同浴場で疲れを癒やす。アルルは小さな街だが、ローマ人の息遣いが身近に感じられる素晴らしい街なのだ。
(田原昌)