福島県南会津にある国指定天然記念物「塔のへつり」。100万年にもおよぶ浸食と風化により塔の形が立ち並ぶ自然が造った景勝地だ。「へつり」とは地元の言葉で断崖・絶壁・急斜面・河岸などの険しい道のことだそう。
すぐ近くに公共の駐車場もあり、会津鉄道の「塔のへつり駅」からも徒歩で3分ほど。
この時季は駅周辺も駐車場も覆われるような鮮やかな紅葉が見事。
紅葉の木々に囲まれた贅沢過ぎる駐車場に車を停め、土産物店や食事処の集まる場所から階段を下りれば吊り橋まではすぐ。
荷重制限があり一度に30人以上渡橋しないよう注意書きがしてある。見学者が歩くたびにギシギシと揺れる橋を渡るのはなかなかスリリングな体験。
吊り橋の名は「藤見橋」。塔のへつりは藤の花の名所でもあり、初夏の藤の花が咲く時期も素晴らしく見ごたえがあるという。
橋を渡り切ったところは舞台岩と呼ばれ、塔には烏帽子岩、護摩塔岩、象塔岩、尾形塔岩、九輪塔岩、櫓塔岩、屋形塔岩、獅子塔岩、鷹塔岩、鷲塔岩と名前付けられている。
吊り橋の右手には断崖の下の浸食により平らになった場所を歩くことができる細い道がある。柵や手すりがないので雨上がりなどは特に歩きやすい靴で出向きたい。
急こう配の狭い石段を上がると岩のくぼみにお堂が建ち、大同2(807)年に坂上田村麻呂が創建したと伝えられる虚空蔵菩薩が祀られている。
頭上に迫る岩と川幅の広いエメラルドグリーンの水面に映る岩肌や流れの緩やかな岸辺に集まった色づいた落ち葉の美しい姿を堪能し再び藤見橋を渡る。
住所:福島県南会津郡下郷町 弥五島下タ林
(小椚萌香)