開湯から1300年、粟津温泉 いにしえの湯宿「法師」

養老2(718)年に開湯した歴史ある粟津温泉。世界最古の温泉旅館としてギネスブックにも掲載されたことがある「法師」に宿泊した。

玄関先は老舗宿の趣きを放ち、館内に入ると高い天井に和風の照明と梁が見事。

履物を脱いで上がると下足番のスタッフが下足の世話をしてくれる。

庭園を望む青い壁と畳に敷かれた赤い毛氈が雅な雰囲気を醸し出す和室に案内され、抹茶と茶菓子の接待を受ける。

抹茶月詩という茶菓子は法師の宿泊者のためにあつらえたもの。旅の疲れをふと忘れさせてくれる一服をいただく。

館内は「新春の館」「春の館」「夏の館」「秋の館」という名前の建物からなり、日本庭園を取り囲む造りで渡り廊下など要所要所に趣向を凝らした休憩所が設けてある。

建物の古さは感じられるが、室内は広めに造られていてゆったり。

おすすめの部屋は庭園内に設えた離れ「延命閣」。明治時代に宮大工の手によって建てられた総檜の御殿造りの建物で昨年、国の重要文化財に登録された。

秋の館の3室ある特別室もおすすめ。それぞれ趣きの異なる和室で庭園もよく見渡せる。

春の館はフロントに近く、伝統的な木造建築で老舗旅館を味わいたい方におすすめの趣き深い和室が揃う。温泉へ何度も入られる方には大浴場に近い夏の館が便利だろう。

大浴場は男性用・女性用とも大きな湯船の内湯と自然石を配した庭園風の露天風呂。

貸切湯は畳敷きの泰澄の湯と御影石の浴槽の雅亮の湯の2か所。露天風呂ではないが、気兼ねなく入浴できる。

食事は食事処でいただく。案内された食事処は泰澄殿。畳敷きにテーブル席で天井の灯りに天井画が組み込まれた広々とした大広間だ。

襖の引手も九谷焼らしく小さいながら彩色鮮やかで目を惹く。

料理は食前酒、酒肴、造りと続くコース料理。北陸の山海の幸や加賀の郷土料理などが並ぶ。匠の特選コースをいただける部屋食のプランもあるので部屋食希望の場合は予約時に確認するとよい。

滞在中は苔むした日本庭園や館内のパブリックスペースに展示される皿や骨董品を見て歩くのも興味深い。

売店には美しい焼物が所狭しと並ぶ。お土産にひとつ買って帰りたくなるかわいらしさだ。

 

住所:石川県小松市粟津町ワ46

法師 公式サイト:http://www.ho-shi.co.jp/

 

(小椚萌香)