懐かしい活版印刷で作られた美しいパリのガイドブック 『MA VIE A PARIS』

今、活版印刷が見直されていることをご存じだろうか。

活版印刷は、「活字」と呼ばれる鉛で出来た文字を一つずつ拾い組み合わせ、凸面にインキをのせて刷る印刷技術である。

近年はデジタル技術の進歩により、その印刷文字を見ることも減っていた。しかし、独特の書体や紙に印刷された風合いとデザイン性が今、クリエイターたちの注目を集めているのである。

© Sophie Delaporte

18 世紀パリの手工芸技術を継承して作られる白い陶器で有名なフランスのライフスタイルブランド「アスティエ・ド・ヴィラット」から、2016年1月に発売されたフランスのガイドブック『MA VIE A PARIS』は、まさに芸術作品とも言える装丁である。

デザイナーであるイヴァン・ペリコリとブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットが、パリのテイストを具現化し、オブジェのような美しさがこの本の特徴と絶賛された。三方金の装丁、長編小説を思わせる判型。

そして、パリを自分の庭のごとく知り尽くした著者が書いたこの本には、便利な情報が満載されており、『MA VIE A PARIS』のタイトルにふさわしく、イヴァンとブノワが個人的に通う店や場所を惜しげもなく紹介されている。

その中には超有名店もあれば、未だかつて明かされたことのない秘密の隠れ家もあり、自分たちが本当に居心地良いと感じるパリならではの場所の雰囲気を魅力たっぷりに且つ詳しく解説する。世界で唯一、活版で印刷されたガイドブックである。

フランス語版の発刊の後、その後の9月には英語版が出版。日本語版での出版も期待されていた中、今年 140 周年を迎えたDNP(大日本印刷株式会社 ) とのタグにより、今回実現となった。

DNPが長い社歴の中で大切に継承し保存していた活版印刷の技術はまさに13年ぶりの提供で、日本の職人たちの手による『MA VIE A PARIS』の印刷作業が行われた。

フランス語のアルファベットが 26 文字であるのに対し、日本語で使用される文字の数は3,000を超えるなか、すべての行程は手作業。

原稿を目視しながら一人目の職人が、無数の細かい仕切りの入った木棚に並ぶ漢字と仮名の活字を一文字ずつ拾い、二人目が不足している活字を鋳造する。

そして三人目の植字工が数字とアルファベットを追加しながら、活字をページの形に組む。

見事な一連の作業が、熱い鉛とインキの匂いが満ちる中、驚異的な速さと正確な手さばきで行われ、完成したガイドブック『MA VIE A PARIS』。

是非、手に取って実物を見てほしい。

(Y.FUKADA)