元両替商の町家でいただく「はり新」の「かみつみち弁当」

ならまちは江戸時代以降の町家が建ち並ぶ風情ある地域。お洒落なカフェや老舗の食事処、土産物店が多く存在し、観光客で賑わう。

世界遺産元興寺の西側に築230年の元両替商の町家を利用した食事処「はり新」。

ならまちの街並みに多く見られる格子と玄関先の暖簾の横に下がる紅白のくくり猿がならまちの雰囲気を醸し出す。

暖簾をくぐると石の三和土の先に下足箱があり、こちらで履物を脱いで上がる。

間口に対して奥行きの長い構造は奈良町家の特徴。

奥庭側の20畳の座敷は武家との商談に利用されていたという純和風の広間。

手前の囲炉裏の部屋は掘りごたつ式になっており、お座敷が苦手な方で夕食時に伺う場合はこちらの席を予約するとよいだろう。

地酒は今西清兵衛商店(春鹿)、千代酒造、梅の宿酒造など、個性的な酒蔵の商品を用意する。

食事は名物「かみつみち弁当」、天麩羅御膳、会席料理など奈良に因んだ食材と調理法を用いた伝統的な和食を提供する。

上ツ道(かみつみち)は奈良盆地を南北に縦貫する古代日本の官道のひとつで、古道「上ツ道」に面した場所に店が建つことから名付けられた「かみつみち弁当」。

食前酒と先附、旬の食材を使った松花堂弁当、天麩羅、お吸い物が付く。

茶碗蒸しを追加したり、天麩羅なしなどのオーダーも可能。

先附には吉野葛で練り固めた胡麻豆腐。季節により玉蜀黍(とうもろこし)豆腐、トマト豆腐、枝豆豆腐などに変わる。

松花堂弁当には日本の古代チーズと呼ばれる「蘇」の作り方などを記載した用紙の下に手間と時間を掛けて作ったこっくりした風味の「蘇」が入る。

煮物は素材の味が引き立つ薄味に仕上がり、天麩羅は揚げたてをいただける。

追加でオーダーしていた茶碗蒸しはゆずの香りと出汁が効き、熱々で美味しい。

デザートは大和茶入りのわらび餅。ぷるんとした舌ざわりに香ばしいきな粉をまぶしていただく。

ならまちの風情ある屋敷で悠久の時に思いを馳せての食事は味わい深いものであった。

 

【はり新】

住所:奈良市中新屋町15番地

営業時間:昼11:30~15:30(14:30ラストオーダー) 夜18:00~21:00(20:00ラストオーダー)

定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)

(小椚萌香)