セザンヌの愛した街、南仏プロヴァンスを巡る旅

マルセイユからバスに乗り、山の方に向かって走る事約30分。「Aix-en-Provence(エクス・アン・プロヴァンス)」という街に到着した。

規模はマルセイユのようには大きくないが、光と緑があふれ、ずいぶんと賑やかな街である。この場所こそが、画家「Paul Cezanne(ポール・セザンヌ)」が愛した街である。

旅の出発点となる観光局前の広場に、セザンヌの像が立っていた。

これは「帽子を被った自画像」を元に作られたブロンズ像であり、カンバスなどの絵の道具を背負って出かける彼の姿は、この街で見かけられた姿なのだろう。

セザンヌにまつわる建物はいくつもあり、それらを巡れるように足元には「C」と書かれた標識が埋め込まれていた。

標識を辿っていくと、セザンヌの誕生から通っていた学校、妹の家や友人の家などを見る事が出来るようになっている。約2時間のガイドツアーもあるので、参加してみるのもオススメ。

観光局から中心の通りをずっと歩いて行くと、この街には多くの噴水がある事に気付く。水も緑も豊かで、街路樹が青々としている。通り沿いの店やカフェは賑わい、市場も開かれていた。

そんな大通りが終わると、細い坂道になる。ここを上がっていくと辿り着くのがセザンヌの生家。中には入れないが、1839年1月19日に彼はここで生まれている。

街の中心から離れるが、セザンヌのアトリエに向かった。ローヴの丘の上にあり、景色の良い場所である。彼は晩年から死去するまで、このアトリエで絵を描き続けていたという。

ここには彼が使用した絵の道具や、静物画のモデルなどが現存している。

まるで彼の絵が、そこにあるかのようだった。窓も非常に大きく、絵を描くのに最適な光の環境をつくっていた。

庭に出てセザンヌのようにそぞろ歩いてみよう。そしてアトリエから出て遠くを望めば、彼が愛し、何枚も描き続けたサント・ヴィクトワール山を見る事が出来るかもしれない。

美しい風景、豊かな緑。明るく暮らす人々を見ていると、セザンヌがこの街を愛した理由が分かるような気がした。

(田原昌)