約150年前、日光東照宮を造るために漆塗りの職人しとて日光に在住し、その邸宅に侍などを泊めているうちにいつしか宿屋になったという「奥日光小西ホテル」。筆者は、2012年6月にこの宿を訪れた。
1976(昭和51)年に新築された現在のホテルは長い年月を重ね、修学旅行生など団体客も受け入れており、いわゆるラグジュアリーホテルとは趣きが異なることを先に断っておく。
宿泊した部屋は湖側の6畳和室とツインベッドルームの和洋室。
貸切湯利用のため連絡すると空いている時間は夕食の時間と重なってしまう。食事時間を遅くしてもらえるかと問うと時間をずらしても同じとの回答。さもありなん、と気を取り直して貸切湯を予約。
貸切湯の脱衣所のテーブルに冷水が用意してあるのが嬉しい。
内湯から露天風呂へと続く湯船は白濁した硫黄の香りの温泉が満ち、露天風呂の先から溢れ出ている。
湯は高温でよく温まり、温泉から上がってからいただく冷水のありがたさはひとしお。
貸切湯から食事会場へ向かうと料理のほどんどが並んでいるかと思いきや、テーブルにはグラスや箸、先付けなどが並ぶのみ。
着席するとすかさずスタッフが食前酒のマンゴー酒を注ぎに来られ、前菜やお造りなどがタイミングよく運ばれる。
天ぷらは揚げたてを器に盛ってくれる。「時間をずらしても同じ」とはまさにこのことだったのか、と先入観がみごとに崩された瞬間だった。
霧降高原牛の石焼ステーキも柔らかく美味。ひょうたん型の器に入ったよもぎそば、囲炉裏端で焼かれた虹鱒、ビーフシチュー、湯葉の田楽など説明付きで料理の皿が運ばれる。
各テーブルを回って女将が挨拶をされているのだが、シャンと背を伸ばされた和服姿の清々しいこと。気取らない語り口と笑顔が素敵な女将が印象的。
大きな旅館にありがちな冷めた料理をいただくことになると思っていたのは大きな誤算で大満足の夕食をいただいた。
豊かな温泉と美味しい料理、ゲストに寄りそう細やかな接客が嬉しい宿であった。
住所:栃木県日光市湯元温泉2549-5
電話:0288-62-2416
奥日光小西ホテル 公式サイト:
(小椚萌香)