水打ちされた「桜岡茶寮」の玄関前に車を停めるとすぐにスタッフの迎えがある。門をくぐり石畳の階段を上がるとしっとりとした日本庭園が広がっている。
客室は庭園の中に数寄屋造りの離れが4室、温泉掛け流しの露天風呂付きの離れ6室の計10室。
桜岡茶寮にはロビーもフロントもないので、玄関から直接離れの部屋へと案内される。敷地の中ほどにある池の向こうに能舞台があり、舞台を囲うように離れが点在する。
部屋に通されお抹茶と和菓子をいただきながら部屋でチェックインの手続きが行われる。
宿泊した離れは部屋の中に朱塗りの橋のある「胡蝶」の間。窓からは手入れされた日本庭園と池に泳ぐ鯉、能舞台が眺められる。
部屋に温泉かけ流しの露天風呂があるのでひと風呂いただく。
大浴場を利用したい場合は隣接する「あたみ石亭」の風呂が利用できる。あたみ石亭には貸切湯もふたつ。
大浴場も貸切湯もタオルが備え付けとなっているので手ぶらで出向く。
暖かくなりつつあるこの時季は石亭の手入れされた庭園もゆっくり愉しみながら移動できる。
明るいうちに貸切湯「今井浜」を拝借すると今にもひらひらと舞ってきそうな桜を見上げながらの贅沢な入浴。
部屋でいただく料理は美しい会席料理。
厳選した旬の素材を叙情豊かな物語に仕上げた会席料理は一品ひと品が美しく、心のこもった優しい味わいと細やかな接客に感激。
夕暮れには能舞台にあかりが灯り窓の外には幽玄の世界が広がる。シンと静まった空気の中で吸い込まれるような優雅な舞が繰りひろげられる。
同じ舞台を観覧しているが、別室から観るのでゲスト同士はそれぞれ互いを気にすることもない心に染みる夕べである。
大浴場を利用しなくても部屋の露天風呂でゆっくりと湯浴みができ、部屋で本格会席料理を堪能し、部屋から出ずに能舞台で繰り広げられる熱海芸妓の舞や古典芸能を鑑賞できるという究極のお籠り宿。
一人に付き2枚用意されていたタオルやバスマットなど、気付くと新しいものと交換されており、手厚い気配り・気遣いが存分に感じられる。
宿を出発してから領収書を確認すると、仲居さんにそっと渡した心付けも記載されていた。
住所:静岡県熱海市和田町6-17
電話:0557-81-6123
桜岡茶寮 公式サイト:http://www.sekitei.co.jp/sakura/index.php
(小椚萌香)