福島県の中ノ沢温泉は安達太良山西麓、磐梯山との間、標高1000メートルの高原にある閑静な温泉街。
今回紹介する「御宿 万葉亭」は日本秘湯を守る会の会員宿で、自然湧出の天然温泉を加水加温循環なしの掛け流しで楽しめる温泉党にも高い評価を得ている宿である。
部屋はヒノキ風呂付和洋室、洋室、二間続きの和室が1室ずつ、一般客室11室の全14室。
宿泊したのはヒノキ風呂付きの「すみれ」の間。部屋風呂に温泉を引いている唯一の部屋である。
旅装を解き、まずは浴衣に着替えて大浴場へ向かう。
大浴場は長い廊下の突き当り、とはいえ「すみれ」の部屋は大浴場に一番近いのですぐである。
渓流沿いの樹木に囲まれた総木造りの湯殿は湯船はヒノキ、床や壁はヒバが使用され、香りかぐわしくいつまでも浸かっていたくなるやすらぎ感。
露天風呂に入れば森林浴をしているような清々しい空気と川のせせらぎが一層気分をリラックスさせてくれる。
通常は透明な温泉であるが、「湯の花」の採取や雨などにより白濁する場合があるそうだ。
予約制の無料貸切露天風呂があるのでこちらも拝借。
陶器製の湯船がふたつあり、お湯はもちろんかけ流しの温泉。2人でそれぞれの湯船を独り占めにする贅沢が愉しめる。
事前の予約ができないため、チェックインの際には申し込みを忘れずに。
風呂上りのほかほかとしたからだで広縁の椅子に座って外を眺める。自然の景色に癒される時間がいとおしい。
ゆっくりしているだけで空腹を感じるのは、湯浴みで知らずにエネルギーを使っていたからか。夕食の時間が待ち遠しい。
食事は前菜から先付、造りと続く創作会席風の地元の食材にこだわった郷土料理が並ぶ。
栗、銀杏、もみじ、稲穂など季節感漂う美しく盛られた一皿にもてなしの心があふれている。玉手箱のような器の蓋をそっと開けると磐梯鱒と鯛のお造りが。
食材は旬の野菜、福島牛、会津地鶏、塩川産のコシヒカリなど管理された品である。吾妻山の清流で育ったイワナやヤマメなどの川魚も美味しくいただける。
就寝前には部屋の温泉で温まることにしよう。
大きな窓を開ければ半露天風呂のようになり静かな自然の中での温浴でゆるゆるとした時が流れていく。
4月に「ゆっくりお寛ぎいただく旅籠の空間」を目指し「大人の宿」としてリニューアルした「御宿 万葉亭」。
16歳未満は入館不可、団体利用は12名までとなっているのでご留意を。
住所:福島県耶麻郡猪苗代町中ノ沢温泉
電話:0242-64-3789
サイト:http://www.manyoutei.jp/index.html
(小椚萌香)