モスクワの中心である、赤の広場に程近い地下鉄駅「Театральная(チアトラリーナヤ)」を降りると、賑やかな人の波に驚かされる。
外はもう真っ暗で、10月と言っても肌寒いモスクワを多くの人々が行き交い、とても活気づいていた。
マルクスの像が立つ「革命広場」には光の門ができていた。アールヌーボー調の、美しいデザインが施された門である。
その門を通して見たバレエとオペラの殿堂「Большой Театр(ボリショイ劇場)」は、落ち着いたライトアップで格調の高さを見せつけていた。
広場では秋の収穫祭を祝っているのか、多くの屋台が出て人々が楽しそうにチーズや小料理をつまみながら、ホットワインやウォッカに舌鼓を打っている。
まだまだ夜はこれから、といった風情であった。
赤の広場へ向かうと、観光客も加わって人の数は更に増す。夜とは思えないような賑わいだ。
場所柄、警備は厳重なので危険だと感じる事はない。
普通に気を引き締めて、赤い煉瓦でできた立派な門をくぐる。
広大な赤の広場。
写真やテレビでよく見ている場所だが、その広さを自分自身で感じるのはまた違う。
ロマノフ王朝と、ソビエト連邦という歴史が通ってきた場所なのだと、圧倒的な存在感が訴えかけてくる。
身が引き締まるような思いだ。
広場の端には、タマネギ型の頭で有名な「Храм Василия Блаженного(聖ワシリー教会)」が煌々と照らされていた。
思っていたよりもコンパクトにまとまった小さな教会だが、青や緑といった彩りが実に美しい。
ついついタマネギ型の天井に目が行ってしまうが、壁に施されたフレスコ画もまた美しいのでよく見て欲しい。
赤の広場の右側にはクレムリン、正面に聖ワシリー教会、そして左側には「ГУМ(グム)」という巨大なショッピングモールが立っている。
このグムは他と違って派手なライトアップをしているので、広場が明るく見える。
少々違和感を感じる派手さだが、この賑わいこそがモスクワっ子たちのパワーであり、今のロシアなのだろう。
(田原昌)