大正ロマネスクを用いたアンティークな造りの「元禄の湯」で有名な群馬・四万温泉の積善館。
傾斜地に建つ宿は「日本最古の湯宿建築の本館」、「和風の粋と技巧の山荘」、「贅と心づくしの佳松亭」の3つの建物から成る。
元禄4年(約320年前)に建てられた本館は、今なお昔ながらの湯宿建築の雰囲気を色濃く残し、県指定文化財に登録された。
昭和11(1936)年に本館の山側に建設された桃山様式造りを取り入れた山荘は、国の有形文化財、県近代遺産でもある。
山荘よりさらに奥の高台に佇む「佳松亭」(かしょうてい)は、深い松林に囲まれるように街のにぎわいから離れて建つ。
今回は高台に建つ佳松亭を紹介しよう。
本館のフロントとは別に佳松亭5階にフロントがあり、ラウンジでお茶をいただきながらのチェックイン。
お世話になった部屋は、老松越しに山を背景にした温泉宿が眼下に見える佳松亭最上階の和洋室。
広々とした居室とベッドルーム、ソファが横たわるリビング、広い縁側には源泉掛け流しの露天風呂。
1泊ではなんとももったいないような広さの部屋である。
館内の浴場は露天風呂付き大浴場「杜の湯」、貸切湯「山荘の湯」、ロマネスク様式の「元禄の湯」、混浴の「岩風呂」がそれぞれの建物に分散しすべて利用できる。
有料であるが、佳松亭にはほかに貸切湯がふたつある。
それぞれに時代の情緒を感じられるので館内の風呂巡りも楽しい。異次元の世界へ誘うような館内をつなぐ通路もまた趣があるのだ。
部屋でいただく夕食は一献として、地酒からはじまる会席料理。
ドリンクメニューにあった「オゼノユキドケ」というビールをオーダーし、まずは喉を潤す。
順に運ばれてくる料理は蓋を開けるのもわくわくするような美しい器や椀の中に精妙な味わいの逸品が収まる。
素材や料理法などを訊ねると一瞬の迷いもなく答えが返ってくる熟練の仲居さんにも癒される寛ぎの時間を与えてもらった。
温泉、料理、接客の3拍子揃った極上の湯宿であった。
住所:群馬県吾妻郡中之条町四万温泉
電話:0279-64-2101
サイト:http://www.sekizenkan.co.jp/kashoutei
(小椚萌香)