チェコの首都・プラハから約2時間で行ける場所に、Kutná Hora(クトナーホラ)という街がある。
中世に銀で栄えた世界遺産の街であり、現代的なビルもなく石畳が広がる中世の雰囲気を味わう事ができる場所だ。
古い街並みの中に、サーモンピンクの店「Dačický(ダチツキー)」を見つけた。Pivnice(ピブニッツェ)と表に書いてあるが、ビールを自家醸造しているレストランである。
「Dačický」というのはクトナーホラで活躍したグルメで大酒飲みの作家、ミクラーシュ・ダチツキーにちなんで付けられた名前だそうだ。
壁には紋章を掲げており、映画に出てきそうな雰囲気を醸している。きっと面白い店なのだろうと、興味半分で重厚な木の扉を押して中に入ってみた。
店内に入ると古そうなシャンデリアが下がり、壁や扉などにには古びた絵が描かれ、分厚い木のテーブルや椅子が並んでいる。まさに中世かファンタジー映画に出てくる、酒場に入り込んでしまったようだ。
中世ヨーロッパ調の店だが、店員はちゃんと流暢な英語で対応してくれるので問題はない。メニューも英語を併記していて、料理の説明も詳しく書いていた。
伝統のボヘミア地方とモラヴィア地方の料理がメインで、他には創作料理が並ぶ。
注意しなければいけないのは、ここの料理はどれも量が多いという事だ。メニューにグラム数を書いているので、参考にするといいだろう。
「道化師クリシュトフの特効薬」なんていう面白い名前のスープもあれば、チェコ伝統の「グラーシュ」という肉を煮込んだシチューも美味しい。
「ミクラーシュ・ダチツキー卿のレイピア」という料理は、牛肉を剣に刺した状態で提供される豪快な料理だし、「猟師の木皿」なんていう猪と鹿を使ったいわゆるジビエ料理もある。
見た目も、料理の名前もファンタジーの世界のようで楽しくなる事請け合いだ。
そして自家醸造のビールもぜひ試して頂きたい。
「クトナーホラ」というラガービールと「ミクラーシュ」というダークラガーがあり、香りも良く飲みやすい。
ここは店の雰囲気を満喫しながら、自慢のビールと楽しい料理を食べるために、わざわざ尋ねたいレストランなのである。
(田原昌)