桜島を借景する薩摩の大庭園「仙巌園」で歴史を体感する

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九州新幹線の終着駅・鹿児島中央駅からバスに乗って錦江湾方面へと走る。街中を抜けて海が近くなってきた頃、薩摩藩の庭園「仙巌園」が見えてきた。

正式名称は「仙巌園 附 花倉御仮屋庭園(せんがんえん つけたり けくらおかりやていえん)」という長くて難しいものだが、地元では親しみを込めて「磯庭園(いそていえん)」と称している。

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薩摩藩にとっては庭園であるばかりでなく、近代においては迎賓館のような役割も果たしていたそうで、外国の文化を取り入れた建造物も多い。

ヨーロッパの文化をいち早く取り入れた28代藩主・島津斉彬によって、日本にはなかった「反射炉」や「機械工場」なども造られ、これらは昨年「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に指定された。

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そんな他の庭園とは様相の違った仙巌園だが、関ヶ原の合戦で良く知られている島津義弘の孫、19代藩主の光久によって島津家の別邸として作られたのが始まりだ。

大きな石灯籠に植生が南国の木々。桜島が築山に、錦江湾を池に見立てた雄大な借景によって成り立っている。実にスケールの大きな庭園だ。

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園内には明治時代に当時の藩主が使っていたという御殿もあり、ガイドツアーで中を案内してもらった。

御殿の外観は和風建築だが、和室ばかりでなく洋風な造りの間もあり、早くからヨーロッパと繋がっていたことを知る。なかなか他では見られない造りだ。

ツアーの最後には、中庭を眺めながらお抹茶と和菓子を頂くという趣向。

お抹茶の茶碗は藩主専用だった白薩摩、和菓子は「飛龍頭(ひりゅうず)」という島津家の家紋が押されたもの。藩主に謁見したような気分である。

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園内には他に「猫神社」という、全国でも珍しい神社がある。

これは文禄、慶長の役の際に猫を連れて行った島津義弘にあやかって建てられたものだが、全国から猫の飼い主たちがお参りに来ているという。猫たちの健康を祈り、出会いに感謝する絵馬が心を打った。

そしてここから見る桜島が素晴らしい。

青い空と海、煙を吐いている桜島。

それが庭園の緑とひとつになって、雄大な一幅の絵となっていた。

(田原昌)