1915(大正4)年に創業した長野県の「中の湯温泉旅館」。
東京からは中央自動車道・長野自動車道を利用し、松本インターチェンジから国道158号線を安房(あぼう)峠に向かう。上高地方面への釜トンネル入り口の信号を左折し、安房峠を旧道で上っていく。くねくねと曲がる細い道をしばらく行くと「中の湯温泉旅館」に到着する。
宿は、駐車場から見上げる恰好だ。玄関口までまた坂道が続く。
ロビーは広く、囲炉裏の切られた小上がりが見える。勧められて奥へ進むと、窓から壮観な景色が飛び込んできた。
正面に見える霞沢岳とその左稜線から顔をのぞかせている山が穂高岳だ。望遠鏡を備えているので、野生動物や野鳥も見つけられるかもしれない。
中の湯温泉旅館は秘湯を守る会会員宿。大浴場は上質な温泉を掛け流しで注いでいる。空いていれば、無料で利用できる貸し切りの家族風呂もある。
秘湯好きにはもう一つ愉しみな湯がある。
剣豪「塚原ト伝」(つかはら・ぼくでん)の名を冠した洞窟風呂「卜伝の湯」だ。釜トンネル入り口付近にある梓川の渓流沿いに建つ、なにやら怪しげな小屋。これが中の湯温旅館泉所有の「卜伝の湯」である。
「卜伝の湯」まで送迎してもらえるので、浴衣にタオルを持ってマイクロバスに乗り込む。
小屋の鍵を開けてもらって中に入ると簡素な脱衣所。暗闇に向かう階段を下りたところに、野趣あふれる岩窟風呂が鎮座している。設備としては湯船と洗面器が置いてあるだけなので、浸かって温まるのみであるが、秘湯感は満載。日帰り入浴も受け付けており、宿泊者でも早めの予約が必須である。
食事は朝夕とも食事処でいただく。
夕食を部屋食にできる1日3組限定の「朴葉(ほおば)ステーキプラン」もあるので「夕食はゆっくり部屋でとりたい」と希望する場合は、このプランを利用したい。香ばしい朴葉味噌と信州牛がよく合って美味しい一品。
中の湯温泉旅館は上高地や乗鞍岳、焼岳への入山の拠点として宿泊する登山客も多い。朝食の時間には多くの宿泊者は荷物を背負い、登山の装備で出かけるところだった。
登山ではなく、上高地ウォーキングに出かけるにはどうするか?
上高地はマイカー規制のためバスかタクシーで行くこととなるが、中の湯宿泊者はマイカーを駐車場に残し、宿のマイクロバスで送ってもらうことができる。
釜トンネルを抜けると素晴らしい風景が広がっていた。
前夜、夜のとばりが下りてから見た天の川、星降る夜空もまた素晴らしかったことも付け加えておく。
住所:長野県松本市安曇4467
電話:0263-95-2407
中の湯温泉旅館 サイト:http://www.nakanoyu-onsen.jp/
(小椚萌香)