この時期の鎌倉は、紫陽花(あじさい)が盛りでとても美しい。
赤や紫、微妙な色の変化もさることながら、花弁の形も色々と種類があって楽しませてくれる。
紫陽花の名所と言えば、明月院や長谷寺、円覚寺(成就院は残念ながら昨年から工事中)。平日だろうと土日だろうと、その美しさを一目見ようという人で鎌倉が混雑するのは否めない。
そこで今回は敢えて有名な場所を外し、のんびりと紫陽花を堪能できるコースを巡ろうと思う。
スタートは北鎌倉駅。駅を降りると、ほとんどの人が左側に行き、円覚寺と明月院を目指して長蛇の列を作る。我々はこれを素通りして右側を行く。
すると、すぐに東慶寺に着く。門に至る短い階段の両脇に紫陽花が咲き、小規模ながらもひとつの「庭」の空間を作り上げている。
明月院ほどではないが、この紫陽花と門の渋さが相対してて良い絵になる。
東慶寺から真っ直ぐに鎌倉方面へ歩くと、浄智寺(じょうちじ)がある。
ここは寺に入る手前で、咲き並ぶ紫陽花がとても美しい道を作っている。
背の高い木々が生い茂り、一定の日陰を作っているので緑が多く、紫陽花も生き生きとして見える。山門とのコントラストも素晴らしい。
浄智寺は年中様々な花が咲くので、紫陽花以外でも立ち寄ってみたい寺だ。
さて、浄智寺の脇に源氏山へ続く山道がある。
切り通しのような、雨の日は危なっかしそうな場所を通り抜ければ、広々と開けた葛原岡神社に辿り着く。ここは紫陽花、菖蒲、睡蓮が一度に楽しめる穴場である。
この葛原岡神社の魅力は、紫陽花の色・種類が豊富であり、ゆっくりと休憩ができる場所も多いことだ。
文章博士として活躍した日野俊基(ひの・としもと)を祀っており、文を書く者としてはお参りしなくてはならない場所でもある。
紫陽花をだいぶ堪能したので帰途に就く。左右への分かれ道を左に行くが、もう少し見たい、湘南の海も見たいという人は、この源氏山から右へ下れば大仏の脇に出る。
左手を行くと急な下り坂になり、銭洗い弁財天に着く。岩が多いので咲いている紫陽花は少ないが、水の溢れる涼しげな雰囲気を味える。
ぐるりと巡ってきて、混雑していたのは銭洗い弁財天のみ。鎌倉駅に近づいて、初めて人の多さに驚いたほどだ。
わざと名所を外し、のんびりと花を楽しむのもひとつの贅沢ではないだろうか。
(田原昌)