万平ホテルは、アルプス館、ウスイ館、アタゴ館、別館とコテージで構成されるリゾートホテル。
クラシックホテルの醍醐味を味わいたいならアルプス館かウスイ館に宿泊するのがお薦めだ。今回はホテルのシンボルというべきアルプス館の一室を紹介しよう。アルプス館は万平ホテルのメインエントランスのある建物。1階はフロントロビー、フレンチ・和食・中国料理の各レストラン、カフェテラス、バー、ショップなどがあり、夏の休日ともなれば宿泊客のほか避暑で訪れる立ち寄り客でごった返すような賑わいであるが、客室のある2階に上がればクラシカルな装いの空間が静かに広がっている。
予約の部屋は128号室、ジョンレノンが常宿として滞在していた部屋である。
部屋に入るとライティングデスクの置かれたスペースとベッドルーム。窓側のリビングとベッドルームがアンティークな磨りガラスをはめ込んだ幾何学模様の窓枠で区切られ、半個室風な造りになっている。リビングの一角には床の間があり、和洋折衷の独特な雰囲気。
軽井沢彫りが施された調度品の図柄は欧米人の好んだ桜の木や花のモチーフが多用されている。その重厚なチェストやデスクが宿泊者の体温を染み込ませたように鈍く黒光りを帯び、ホテルの長い歴史を物語ってくる。
バスルームにはタイル張りの床に猫足のバスタブが鎮座している。使い勝手という点ではいまひとつであるかもしれないが、美しくなめらかなフォルムのバスタブに身を沈めればレトロで優雅なひとときを満喫できる。
夕食はメインダイニングルームでフレンチのコース料理。万平ホテルを利用されたことがある方には今更説明することでもないが、メインダイニングと廊下の仕切りに使われている大きなステンドグラスが印象的だ。広々とした室内は格調高い折上げ式の格天井がアンティークなシャンデリアやランプの光に照らされ趣のある空間になっている。いつもよりドレスアップして伺いたい。
前菜とサラダのプレート、スープは3種類からのチョイス、魚料理、肉料理、デザート、コーヒーまたは紅茶とボリュームも申し分ない。温かい料理の器の下皿に手が触れると、ハッとするほど温まっている。給仕の仕草にもあわただしさは少しも感じるところがなく、次のプレートが出てくるまではゆっくりとして場の雰囲気に沿った時間の流れを崩さない。きびきびとしたスタッフのホスピタリティも素晴らしく、大切な人との特別な時間を過ごすのに相応しいホテルだと改めて実感したディナーをいただいた。
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
電話:0267-42-1234
サイト:http://mampei.co.jp/
(小椚 萌香)
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