Facebook本社も手掛けたフランク・ゲーリー
フランク・ゲーリー(Frank Gehry) は、脱構築主義の傑作として建築史に名を残したビルバオ・グッゲンハイム美術館や、昨年開館したルイ・ヴィトン財団などの作品で知られる建築家。常識に囚われない挑戦に満ちた彼の建築の数々は、建築の歴史に衝撃と革新を与えてきた。
ゲーリーは、カナダ・トロント育ち。1947 年にロサンゼルスに移住。1954年、 南カリフォルニア大学で建築学士を取得後、ハーバード大学デザイン大学院で都市計画を学ぶ。
その後建築家としてしての50年に及ぶキャリアのなかで、世界各国で公共および民間の建造物を手がけてきた。 カリフォルニア州メンローパークのFacebook本社 西キャンパスも彼の作品である。
ゲーリーの世界に浸れる展覧会
展覧会の会場では、100点超の模型やスケッチ、建築素材などを用いてゲーリーのクリエーションを紹介。
代表作の建築空間を撮りおろし映像で体験できるプロジェクションコーナーや、ゲーリーの事務所のミーティングルームに着想を得た「ゲーリー・ルーム」も登場。アイデアの原点である自邸の模型や、アイスホッケー選手として活躍していた時代のユニフォームも並ぶ。
建築家の安藤忠雄や西沢立衛、ウォルト・ディズニー・コンサートホールの音響設計を手がけた豊田泰久(永田音響設計)がゲーリーを語る、撮りおろし映像を展示されている。
多角的な視点から、彼の「アイデア力」を紐解いてゆく。会場を彩る、ゲーリー自身の言葉たちからも、彼の信念や豊かな想像力の世界が垣間見られるだろう。
同展のディレクションを担当したのは、国内外から高い評価を集める新進建築家の田根剛。ゲーリーの建築から人物像まで徹底的にリサーチし、独自の視点による企画を構成したという。
田根は語る。「『アイデア』はポジティブな意志がなくては生み出せません。 どんなに困難な状況であろうと、現実を直視し、努力と信念、葛藤と重責のなかで『アイデア』 を実現するために勇気をもって闘い続ける建築家 フランク・ゲーリーの「アイデアの力」を 信じてもらえれば最高です」
ゲーリーが語る「アイデア」︎
展覧会のキーワードでもある「アイデア」について、ゲーリーは次のように語る。
まずアイデアが浮かぶ。ばかげているけど気に入る。模型をつくって嫌いになるまで見続けて、 それから違う模型をつくることで、最初のばかげたアイデアを別の見方でみる。するとまた気に 入る。でもその気持ちは続かない。部分的に大嫌いになって、再び違う模型をつくってみると、 全然違うけど気に入る。眺めているうちに、すぐに嫌いになる。直しているうちに新しい アイデアが浮かんで、そっちの方が気に入るけど、また嫌いになる。でもまんざらでもない。ど うするか? そう、また模型をつくって、次から次へとつくる。模型を保管するだけでも膨大な 費用がかかる。でもどんどん続ける。次から次へと進めるうちに、ほら見ろ、最高傑作だ。輝か しく、安上がりで、今までに見たことがないものだ。だから誰も気に入らない。
悔しくて死にたくなる。ところ が、神様がメッセンジャーを送り込んで皆に催眠術をかけるので、 皆気に入る。そしてアイデアを盗もうとする。模型も盗んで行こうとする。頭脳や魂まで持って 行こうとする。でも踏ん張って、絶対にくれてやらない。 やりたいのは、新しいアイデアを生むことだけ。たった一人で新しい模型をつくり続けたい。 保管するのに膨大な金がかかるので、こんなことをしていると模型の倉庫代で破産する。 これは偉大な歴史。伝説でもあり本当のことなんだ。
この続きがどうなるかと言えば、皆が嫉妬し始める。嫉妬が彼らに努力するよう仕向けるならば いいけれど、大半は台なしにするためにがんばる。そこんとこが厄介。
フランク・ゲーリー「マニフェスト」(展覧会プレスリリースより引用)
アイディアを生み出し、向き合い、戦い、もがき、創造という長い旅を続けるゲーリー。その姿は、タフな時代を共に生きる私たちのライフスタイルにも、新鮮な刺激を与えてくれるに違いない。
展覧会概要
会期:2015年10月16日(金)〜2016年2月7日(日)
休館日:火曜日(11月3日は開館)、年末年始(12月27日〜1月3日)
開館時間:10:00〜19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般 1,100円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下 無料
会場:21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデン内)
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂 9-7-6
TEL:03-3475-2121
www.2121designsight.jp
(y.kometani)
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