ブルノは首都のプラハよりも、むしろウィーンのほうが近い。現在でも大学が多く、「芸術・音楽の街プラハ」に対して「学問・技術の街ブルノ」と言われている。
そしてメンデルのいた修道院は現在大学の研究機関の一部であり、「Mendelovo Muzeum(メンデル博物館)」として世界の遺伝子研究の歴史を勉強することができるようになっている。
そんな科学の偉業を成し遂げたメンデルであるが、実はビールも醸造していたことを知って驚いた。
「CHIMAY(シメイ)」など、修道院で作られたビールがベルギーやオーストリアなどに数多くあるが、それと同じでメンデルもエンドウマメの観察をする傍らでビールを造っていたと言われている。
「ブルノの泉」という意味の「Starobrno(スタロブルノ)」は、現在でもメンデルの修道院の隣でビールを造り続けている。
チェコの代表的料理と、ブルノ周辺の牧畜が盛んなモラヴィア地方のチーズやハムなどを頂きながら、工場でできたてのビールを飲めるというのは素晴らしい。
スタロブルノの工場見学は可能だが、残念ながらチェコ語でしか説明してもらえない。私は友人の助けを借りて見せてもらったのだが、ほとんど機械化されていて寂しい一面があった。
小規模でも昔ながらのやり方でビールを造りたいという人たちが現れるのも、無理はないと思った。
ブルノは歴史と科学が同居している街だ。古い街並みも残しながら、そこから発展した科学や技術を垣間見ることができる。
チェコという国の別の一面を見たと思った。
(田原 昌)
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