デートに使える3輪バイク「CAN-AM SPYDER」箱根試乗レポート

前2輪、後1輪のCAN-AM SPYDER

アメリカでは若い頃ハーレーを乗り回していたヤンチャな親父たちが、加齢とともに重いハーレーを支えるのはしんどくなり、重さゆえに転倒することも多いという。そこで、注目されているジャンルが3輪バイクだ。

DSC_6991

カナダ生まれのCAN-AM SPYDERは前2輪、後1輪の3輪バイク。これは4輪のように自立するため、止まっているとき足で支える必要がない。また、2輪と同じく風を切って走るため、爽快感は2輪同様だ。

つまり、2輪と4輪のいいとこどりをした乗り物といえるだろう。「オレは死ぬまでバイクにまたがっていたい」という老齢なライダーからも、支持を得ているという。

今回、スポーツタイプのF3とツーリングタイプのRTの2台に試乗し、実際に体感することができたので、くまなくレポートしたい。

ハンドルバーによる独特の運転感

前輪は4輪車と同じ構造ながらも、丸いハンドルではなく、バイクと同様のハンドルバーで前輪の操舵を行うのが特徴だ。

DSC_6965

バイクの場合リーン、つまり車体を傾けることでコーナリングを行うが、この3輪バイクはリーンしない。

そのため、曲がるときは必ずハンドルバーを押し引きし、きちんと前輪を曲げなければならない。体重移動だけでは曲がらないので注意が必要だ。

車庫入れがラクラク、コンパクトな車体と内輪差なし

全幅が約1.5mと軽自動車並みの広さがあるものの、全長は2.7m前後と短い。当然ホイールベースも短く、小回りが利く。

DSC_6966

特筆すべき点は後1輪ですぼまっているために、内輪差がないことだ。前輪が通り抜けられさえすれば、ハンドルをロックまで切っていても車体のどこもすることがない。

転倒や内輪差で巻き込む心配もなく、安心して車庫入れができるのだ。

クラッチレス・セミオートマチックミッション

搭載される6速セミオートマチックのシフトは左グリップにあるレバーを親指で押し込むとシフトアップ、人差し指で手前側に引くとシフトダウンだ。

DSC_6947

クラッチ操作は不要であり、低速域でもアクセルをあければ自動的にクラッチ制御を行い、ジワッと走行できる。

走行中のシフトチェンジはマニュアルで行うが、エンジン保護のため自動的にシフトダウンは行われる。信号待ちや一時停止でシフトダウンを忘れていても、1速に戻っているので安心だ。

なお、RTモデル、F3-Sモデル(STEEL BLACK METALLIC)、F3モデルそれぞれにマニュアル仕様もラインナップされる。自分でシフトを操りたい方はそれを選ぶのもよいだろう。

安心の車両スタビリティシステム

ボッシュと共同開発した車両スタビリティシステムが装備されており、ABS、トラクション制御、車両安定制御を行う。二輪の場合、ブレーキは右レバーによる前ブレーキ、右フットペダルによる後ブレーキと分かれていたが、この3輪バイクの場合は4輪車と同様、右フットペダルですべてのタイヤにブレーキがかかる。

DSC_6871

ABSが装備されているため、ロックしても自動的にロック解除し最短で止まることが可能だ。ブレーキシステムはブレンボ製と信頼と実績のブランドを採用している。

最近2輪車でもABSを装備するものが増え、今後装備が義務化される流れではあるが、やはり滑りやすい路面で2輪でフルブレーキをするのは勇気が必要だ。

その点、3輪バイクであれば4輪車同様、迷うことなく力任せにフットブレーキを踏みつければいいだけなので気が楽である。

独特のコーナリング・フィーリング

ハンドルバーで操舵する前輪は不思議な操作感だ。バイクと考えるとリーンしないことや、身体が外にもっていかれることへの感覚がとても奇妙に思える。

DSC_6982

ハンドルバーでの操舵のコツは、一気に切りすぎないこと。想像以上によく曲がるため、ジワッとターンインをして、コーナリングの姿勢を維持するのがよいという。

初心者にありがちなのは切りすぎて内側に入ってしまい、戻して、また切っての繰り返しを行い、よたよたしてしまうことだ。

車体にまたがってハンドルバーで操作しても、「これはバイクではない、4輪車だ」と自分に言い聞かせて乗るのがよさそうだ。
後編へ続く

(野間 恒毅)