玄関に入るとフロントと囲炉裏の休憩所。客室はローベッドのツインルームとソファのある居間、トイレと洗面といった簡素な造りではあるが、清潔感が漂っている。
窓を開けると、緑濃い山々の向こうに赤茶けた山肌を見せる頂が望める。北アルプス唯一の活火山、焼岳だ。
秘湯の宿での最大の愉しみは、なんといっても温泉。まずは貸切湯の予約を申し出たところ、本日は不要とのこと。聞けば、今宵の宿泊はひと組だけで宿自体が貸切になっているということであった。
そういうことならばと、大浴場の混浴露天風呂に浸かることに。母屋から渡り廊下を進むと、男女別の脱衣所がある。
女性用の脱衣所で浴衣を籠に預け、ふたつの露天風呂の入り口を確認。迷うことなく混浴露天風呂へと歩を進める。
脱衣所のすぐ近くに大きな岩風呂「おかめ・ひょっとこの湯」が控えている。
中ほどに大きな岩があり、女性用出入り口の目隠しの役目を果たしている。一段上の「おりひめ・ひこぼしの湯」へ続く小道には足つぼを刺激してくれる小石が敷き詰められ、ここにも温泉が流れている。
3つ目の湯船は屋根付きのひのき風呂「朝霧」。
すべての湯が源泉100%掛け流しの温泉だ。お湯はほのかに硫黄の香りが漂い、無色透明で湯の花が舞っている。温泉に浸かって空を仰げば、木々の向こうに山並みが見える。
開放感あふれる露天風呂は、実に清々しい。貸し切りということで、あられもない姿でアイランドホッピングならぬ温泉ホッピングを満喫。
女性専用の露天風呂も4槽あり、もちろんこちらも堪能させていただいた。
温泉宿のもうひとつの愉しみは食事。秘湯の宿には珍しく個室の食事処だ。暖簾をくぐると、天然一枚板のテーブルに向かい合わせではなく、横並びで席がしつらえてある。座って納得、窓からの景色もご馳走だ。
運ばれてくる料理は、手の込んだ料理と美しい盛り付け。山間の宿で、嬉しい岩魚の塩焼きや飛騨牛の朴葉味噌焼きもいただく。
器も女将のセンスなのか、女性好みの繊細さが感じられる。温泉だけでなく食事でも贅沢な気分にさせられた秘湯の宿であった。
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷中尾151
電話:0578-89-2735
サイト:岐阜県奥飛騨温泉郷新穂高温泉にある七つの手造り露天風呂を持つ旅館「谷旅館」
(小椚 萌香)
- 1
- 2