インディージョーンズのワンシーンでも有名なエルカズネのあるペトラ遺跡。
シークを抜けた先に堂々とそびえるエル・カズネ神殿の美しさと荘厳さは、まさに魂が震える感動を与えてくれる。この景色を見るためにペトラ遺跡を訪れる人も多いだろう。
だがしかし、ペトラ遺跡のすごさはこれだけではない。
エル・カズネ神殿よりも更にその先にある「エド・ディル」。
修道院として使われたと言われる建築物であるが、ここに辿り着いた時の感動もまたとてつもなく大きなものだった。個人的には、エル・カズネ以上の感動を得た場所である。
エル・カズネ以上に感動した景色がそこにある。そうとあれば行かずにはいられないだろう。けれどエド・ディルへ辿り着くまでの道はかなり険しい。
エド・ディルは標高1,000mに位置する。
エル・カズネは標高800m。高低差200mの道のりを繋ぐのは、日陰のほとんどない道と約960段の階段。
時間にすればエル・カズネから約1時間の距離であるが、夏にペトラ遺跡を訪れた私にはもれなく灼熱の太陽がついてきた。
持っているお水がぬるま湯になる程の暑さの中歩く遺跡は、本当につらい。
道中ひょっこり現れるお土産屋や物売りの子ども達、ベドウィンが飼いならすロバに癒されながら、前へと進む。
息を切らしながら続く道にはあちこちで、風化した奇岩が織りなすユニークな風景や、どこまでも広がる絶景が見られる。
確かに辛い道ではあるが、ここでしか見られない絶景は本当に素晴らしく、感動しながらの道でもある。今まで多くの遺跡を訪れているが、自然美も一緒に楽しめる遺跡は少ない。そこもまたペトラ遺跡の魅力だろう。
ペトラ特有の景色に励まされながら進むこと、約1時間。大きな岩道を超えると、突然目の前が開けた。
そして、目の前に信じられないほど壮大な景色が広がった。エド・ディルである。
エル・カズネより大きいエド・ディル(幅50m,高さ45m)は、とにかく大きい。
紀元1世紀ごろ建てられた修道院と言われるが、その時代にどうやってこれほどまでの建物を建てたのだろうと不思議に思う。エル・カズネほどの繊細な作りではないが、立派な彫刻が施され、見事なまでに左右対称な建物は本当に美しい。
その大きさもさることながら、本当に1枚の岩を削り作られている姿を目の当たりにすると、感動もひとしお。これが約2000年も前に作られたというから、何とも言えぬ感慨深さがある。
悠久の時を経てその姿を残すエド・ディル。空高く悠然とした様で佇む姿は私たちに多大なるエネルギーと勇気を与えてくれた。
エル・カズネがあまりにも有名なペトラ遺跡だが、エド・ディルを見ずにペトラは語れない。とにかく美しい景色がそこにはある。
(ゆめたび)