京の奥座敷「貴船」──夏の風物詩、川床を愉しむ

京都駅から車なら45分程度で到着するが、叡山電鉄の「貴船口」あたりから道幅が狭いところを通過するので余裕をもって出かけるといいだろう。

予定より早く到着してしまったとしても見どころはある。道は貴船川沿いに延び、貴船神社方面へ進むとやがて空気が冷んやりと感じられてくる。

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しばらく行くと、それらしき料理店や旅館が両脇に現れたと思うと、涼を求めてやってきた観光客で賑わっている。静かな道中とのギャップに驚くかもしれない。食事の予約は必至である。

川床は貴船川の清流の真上、数十センチというところに作られているため、案内される席によっては座りながら冷たい川の流れに手を差し入れることもできる。水面をツーッと渡る華奢な体に透明な羽の蜻蛉が行き交う。

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料理は京会席が主で、天然の竹を利用した素麺流しのできる施設もある。とりあえずのビールをいただくと涼しさが倍増。思わず持参したカーディガンを羽織った。

貴船ならではの冷涼な川に棲む引き締まった川魚の味は格別だ。貴船伏流水の生簀で魚身を引き締めてから、活きたままを調理するそうで、川魚の刺身特有の臭み等は全くない。川魚が苦手な方にもぜひ試していただきたい。

また煮焚物は薄味に仕立てられているとはいえしっかりと出汁が効いていて美味。見た目にも涼やかな硝子の器が多用されている。そのうえBGMが川のせせらぎであるから真に別世界である。

川床の醍醐味である真夏の避暑、川の上のお座敷で繊細な京料理と雰囲気を堪能できる。定番の観光地に飽きてしまったご婦人を川床めぐりにお連れするのも粋である。

(小椚 萌香)

一部画像:active-u / barman / PIXTA(ピクスタ)