1300年の歴史を誇る岩井温泉── 山陰の名旅館「岩井屋」を訪ねて

中庭の見える渡り廊下を過ぎると男女別の大浴場と貸切湯がある。まずは大浴場から拝借。こちらの「長寿の湯」の脱衣所には湯船が見下ろせる大きい窓がしつらえてある。

覗くとまだ誰もいない。今なら湯船を独り占めだ。逸る気持ちを抑え、脱いだ浴衣を籠に入れ浴場への扉を開きそそくさと洗い場へ。

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軽く体を流し、ようやくそろりと湯船に足を入れる。浴槽の中の石段は水面から浅く、そこに腰掛けてみると足が底に届かない。これが名物の深い浴槽で、立ってみると確かに胸元まで温泉に浸かる。湯は足元に敷いている木板の隙間からふつふつと湧いてくる。新鮮極まりない。

見上げると木の壁のステンドグラスの照明、天井が高いので広く感じる。肩まで湯に浸かると、ふう、と溜め息がこぼれる。

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飲泉用の湯出口があるので一口。無味無臭のはずだが、ふわっと硫黄臭が感じられるのは気のせいか。格子の硝子戸の向こうには露天風呂「露天背戸の湯」がある。

街中なので眺望はないのであるが、こちらも源泉掛け流しの温泉で、温まった頬を外気がさーっと撫でていくようで気持ちがいい。

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まったりと温泉を堪能していると家族連れらしいグループがやって来たので「ひとり貸切大浴場」は終了。婦人の湯をお暇(いとま)することにする。

帰り際、ふと見ると貸切風呂「よいまち草」があいていたのでこちらも拝借する。無料で予約不要、あいていれば入れるシステムだ。大浴場と比べればはるかに狭いのだが、見知らぬ人と一緒にならないという贅沢は貸切湯ならではである。

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温泉で温まり、部屋でのんびりしているうちに夕食の時間になる。食事は夕・朝食ともに部屋出し。

ドリンクは梅酒をロックでいただく。テーブルには綺麗に作られた前菜や但馬牛のしゃぶしゃぶ、松葉ガニ、特産の猛者えびのお造りなどが手際よく用意される。

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良質の温泉に浸かり、もてなしの食事、至福の時間を味わうに余りある山陰の名旅館である。

住所: 〒681-0024 鳥取県岩美郡岩美町岩井544
電話:0857-72-1525
サイト:鳥取 岩井温泉 岩井屋

(小椚 萌香)