●台湾からトップクラスの車作りを目指す
P10プリメーラ、R32スカイラインといった90年代の日産自動車のキーとなる車両のパッケージングを手がけ、V35スカイライン、Z33フェア レディZ、そしてR35日産GT-Rの開発主任を務めたMr.GT-Rこと水野和敏氏。
2013年に日産自動車を定年退職した後、台湾に本拠地を置くHAITEC(華創)の 副社長兼、HAITEC JAPANの代表取締役兼COOに就任した。
同社は裕隆汽車という日産自動車と深く繋がりのある企業のいちブランドであり、裕隆汽車は1957年に日産自動車と技術提携、同グループの裕隆日産汽車はマーチ、ティーダセダン、シルフィ、ティアナといった車両の生産を請け負ってきた。
昨今のハードウェアスタートアップにみられるファブレスなメーカーと、技術力の高い工場とのタッグ。このマリアージュが、各地で第一次産業となっている車業界でも起きていたわけだ。
水野氏が指揮を振るっているのは、そういった日本の車両の量産現場も担ってきた土台を受け持つステージだ。ブルームバーグの報道によれば、そこからあらたなブランドを確立するというというではないか。
●300万円前後でドイツ車と戦う
GT-Rの印象こそ強いが、水野氏の得意とする分野は車室内の設計も含めたトータルコーディネート。筆者はR32スカイライン時代に4ドアのGTSを新車で入手してきたからこそ、そう思う。
水野氏×HAITECのタッグからは、フォルクスワーゲンゴルフ、アウディA3、BMW1シリーズ、ボルボC30といったCセグメントに、アジア発の価値ある車を送り出そうという気概を感じる。
アジア圏の土壌を強く意識しているがために、開発する車両の価格帯は300万円前後となるそうだ。しかし、この価格帯でアウディやBMWと戦える作り込みの車両ができるのであれば、世界的にも注目度の高いブランドとなるかもしれない。
スポーツカーの分野で世界No.1を知った水野氏の采配が、この2010年代にプリメーラに次ぐスペシャリティファミリーカーを作り出すのだろうか。出せるのだろうか。この事実を目の当たりとして、僕らは期待という力で応援するすべきではないだろうか。
(武者 良太)
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