【レクサスRC F試乗記】ゆっくり走っても楽しい&気持ちいい! 誰もが楽しめるスポーツクーペ

開発コンセプトは「走りを楽しみたい人なら誰でも、運転スキルに関係なく笑顔になれるスポーツカー」だ。つまり敷居は低いが奥が深いモデル…というわけだ。実はこのコンセプトはIS Fをベースにしたレーシングカー「CCS-R」と同じである。

実はRC F開発時にベンチマークになったのは、BMW M4やAMG C63、アウディRS4などではなくCCS-RだったとRC F開発責任者の矢口幸彦氏は語る。

そんなRC Fの本気度は、サーキットのようなフィールドではなくても乗ればすぐに体感できる。今回、一般道~高速道路を中心に試乗を行なったのだが、ファーストインプレッションは「もしかしてRCと乗り間違えたのか?」と思うくらいの快適性の高さだった。

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IS Fは毎年の進化/熟成により洗練された乗り味になっていったものの、じゃじゃ馬のような荒々しさが残っていた。しかし、RC Fは他のレクサスラインナップと同じ滑らかさ、扱いやすさがある。

確かに乗り心地は硬めではあるものの、剛性感の高いカッチリとした車体にバネ下の重さを感じさない軽やかな足の動き、吸収性のいいサスペンションのおかげで快適だ。つまり、RC Fはグランドツアラーとしての素質もあるのだ。

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エンジンはV8-5.0Lの自然吸気ユニットに8速ATの組み合わせだ。市街地ではおしとやかで静かで扱いやすいので、とても477ps/530Nmとは思えない。低負荷走行時には「アトキンソンサイクル燃焼」になり4.2L相当になるため、燃費計の針も平気で10km/Lオーバーの値を指す。
ただし、一度アクセルを踏み込むとこのエンジン本質が見えてくる。ダウンサイジングターボのように領域からでもわき出るトルクとは違い、回転の上昇に合わせて盛り上がるトルク、7000rpmに引き上げられたレッドゾーンまで一気に吹け上がるレスポンス。やはりNAエンジンは気持ちいいと思わせてくれる。
8速SPDS(スピードダイレクトシフト)は普段は滑らかなATだが、Mモードにすると高い応答アップシフト/ブリッピングダウンシフトとDCTいらずのトランスミッションに仕上がっている。

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400psオーバーのFRモデルということで扱いがシビアに思う人もいるかもしれないが、結論からいえば非常に安心感が高いハンドリングだ。IS Fがタイヤサイズの制限やサスペンションストロークなど、“生みの苦しみ”を味わった反省もあり、RC FではベースとなるRCと並行して開発が行なわれた。

車体はサーキット走行まで対応する強固な骨格(フロント:GS用、センター:IS-C用、リア:IS用)にプラスして「F」専用のブレースがプラス。サスペンションを構成するパーツもRC F専用設計だ。タイヤはフロント255/35ZR19、リア275/35ZR19のミシュランPSS、ホイールはBBS製鍛造アルミホイールの組み合わせとなる。

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操舵力はこの手のスポーツモデルとしては軽めの設定だが、路面からのインフィメーションも非常に高い。そして操舵に対する応答遅れもなく正確性が高いのでライントレース性も良いので意のままにコントロールすることが可能だ。もちろん、この気持ち良さは、日常領域で速度を上げなくても十分に味わうことができる。

ステア特性はクイックではなく、プレミアムモデルらしい心地よいダルさがあるので、直進安定性もすこぶる高い。恐らくメカニカルグリップだけでなく、アクティブリアウイングやエアロスタビライジングフィン、アンダーカバーなどによる空力性能も寄与しているはず。

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RC FにはメカニカルなトルセンLSD仕様と駆動力制御システムを搭載するTVD仕様が選択可能だ。トルセンLSD仕様の自然なフィーリングに対し、TVD仕様はステアリングを切った瞬間から4輪で曲がるようなイメージで、まるでクルマが1サイズ小さくなったかのような軽快感を味わうことができる。

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個人的にはRC Fの世界感に合う走りはTVD仕様のほうだと思っている。ちなみにTVDを採用することでリアの重量は+30kg増えているが、その影響なのか快適性はTVD仕様のほうが上であった。

ブレーキはブレンボ製のフロント6ポッド/リア4ポッドのモノブロックキャリパー仕様だ。サーキットユース対応の絶対的な制動力はもちろんだが、一般道では微妙な速度調整が楽にできるコントロール性やタッチの良さが光った。
走りの良さは操作系にも表れている。RCをベースにしながらも、太さやグリップ感、そして素材にまでこだわったステアリングや、フィット感の高い表皮一体発泡設計のスポーツシート、ドライブモードに合わせて表示が切り替わる専用メーターなど、ドライバーが対話する重要な部位はRC F専用に開発するなど、人とクルマの繋がりにも気を配られていることを実感できるだろう。

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更にRC Fではエンジンフード/ルーフ、アクティブリアウイングをカーボン製に変更する「カーボンエクステリアパッケージ」も設定。約10kgの軽量化はもちろん、見た目の部分でも魅力的である。

と、色々言ってみたものの、残念なことにRC Fの本当の実力はサーキットで走らせないと解らない。手に入れたオーナーは、一度でもいいのでサーキットでパフォーマンスの高さをぜひ味わって欲しい。
ただ、RC Fは速く走らせなくても仕上がりの“良さ”は誰にでも体感できるクルマに仕上がっていることは間違いない。

lexus.jp

 

(山本シンヤ)

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