プレミアムEVメーカー、テスラ・モーターズ(以下、テスラ)のCEOイーロン・マスク氏が来日。遅ればせながら日本に導入された『モデルS』の納車式を行った。特徴的なインターフェイスは日本語に。ハンドル位置も、無論、右ハンドルだ。
『モデルS』は標準仕様で最高速度200km/h、0-100km/h加速5.6秒という俊足の4ドアサルーン。航続距離は最大502km。状況にもよるだろうが、もはやガソリン車並。また、スポーツ性能を重視したければ高性能版の『モデルSパフォーマンス』もある。0-100km/h加速は4.4秒まで短縮される。
テスラの成功の鍵はどこにあるのだろうか。テスラは2003年にシリコンバレーのエンジニアが集い立ち上げたベンチャー起業だが、ファースト・モデルはロータスの協力の下、2シーターのスポーツEVを作り上げた。つまり、大衆車を作らなかったのである。
今年の6月12日、テスラはすべての特許を全面開放した。大英断である。また、独自に展開する充電施設『テスラ・スーパーチャージャー』もそのなかに含まれる。すでに日産やBMWなど自動車メーカーのコンタクトも表面化しているが、今は守るよりオープンソース化したほうがEVの普及にメリットがあると考えている。
『テスラ・スーパーチャージャー』は2015年には、ほぼ全米をカバー。欧州では50番目の拠点をオープンしたばかりだが、日本でも急速にその数を増やしているところだ。
テスラは2020年にパナソニックとの合弁事業で世界最大のEV用電池の生産工場を完成させる予定だ。EVの先駆者として習得したノウハウとともに、この電池は他社へも供給されるだろう。テスラの収益は自車の販売だけではないのだ。
燃料電池車に関してテスラは否定的だ。エネルギーとなる水素の生成には多量の電力を必要とするために、CO2排出量のトレード・オフは無理だと考えている。IT技術を駆使した自動運転技術に関しては5~6年で実現可能だと語っている。
世間一般ではEVは異業種参入が可能といわれるが、そう簡単ではない。現実的にクリアすべき課題は多い。テスラの動向に注視することで様々な将来像が見えてくるはずだ。